ことばの音の流れの持つパワーに気づかせてくれる。あと、とくに子供のころ感じた、自分にはわからない周囲へのこわさを思い出して、なぜか子供の頃の記憶すべてが愛しく思えたり。こういうおはなしがもつ力を感じさせられました。
語り部の方言もあいまってか、怪異がさらに「怪」を「異」たらしめていると思います。それによって作品は現実味を一段と、いや異次元のレベルにまで昇華し、それは、主役に聞き入っている聴衆の一人というよりも、実際にその人を前にして直接、怪なる語りを教わっている感覚すら覚えます。所謂ジャンプスケアは極力にまで抑えてあるのだけれども、忍び寄るような恐ろしさが沸々と沸いてきて、それでいて読了後はどことなく安心感を与えるとともに、怪異そのものは頭の中にいつまでも残る──そんな怪異の集大成です。
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