怪異譚

千織

第1話 黒イ様

童が家さいるどぎに家にいるときによぉ、童の頭にたつっ、と水よんたの水のようなのが落ぢて来たんだとさ。


童が手で拭ってみるどさ、黒い墨みでなのみたいなのが手についだんだど。


天井見でも、雨漏りもしでねぇし、なんも普段と変わらねがっだず。


その後、今度は風呂さ入っでらっけ入っていたらよ、肩にだづっと何かが落ぢで来たんだど。


触ってみるど、ねばちっこい油みでな黒いのが垂れできてたんだどさ。


童は水で流しだども、気味悪ぃど思っでらっだ。


したらば、今度は、寝でらどぎに寝ていたときによ、だづっと口元に落ぢできたんだなす。


生臭くてどろどろしてらがら、童はびっぐりして、急いで拭ったんだども、口の中に入ってくるのす。


童は急いで水ば口さ入れで、吐いだんだど。

黒い水が出で、飲み込まねで飲み込まない済んだけどもさぁ、さすがに怖がってよぉ、隣で寝でら兄貴ば起ごして言ったんだず。


兄ぃににいに、この家はおがしねぞ。黒い水だの油だの垂れできでら。おらおっかね」


兄ぃには起き上がっで言っだず。


「何もおがしなごどはねおかしなことはない。昔っがらこの家さば黒イ様がいでけでらいてくださる心配すっこだね心配することはない


兄ぃにがそう言っだどぎよぉ、兄ぃにの口の中から黒い固まりがこっちを見でらって見てるって童は気づいだんだず。


童っ子は、はぁ怖ぐなってす、裸足のまま家を飛び出したんだど。

童はそのまま家さば帰らねがっだ帰らなかっあけども、そん時の童どおんなじよんた同じような年の子が兄ぃにの家さ近づくと、いなぐなってしまうようになったんだ。


おめもお前もさはぁ大きぐはなったけども、油断すなや。

兄ぃにの家さば近ぐなや。

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