ネコは甘さを感知できない

しえる

₍ᐞ•༝•ᐞ₎◞ ̑̑

1

第1話

休日になると、私のペットは一匹多くなる。




うちにはもともとトイプードルが一匹と、長毛ミックスのネコが一匹いるんだけど。



プードルはシルバーの毛色で今年8歳、オスで名前はルーク。ベアカットが愛らしい、のんびり屋のおりこうさん。


ネコはペルシャ猫(推定)と日本猫のミックスで白くてふわふわ、ツンデレお嬢のルル、1歳くらい。




そして休日限定で増えるのは、人間のオスの理仁りひと、28歳(=猫で言えば3歳)。


3匹のうちで一番手がかかる、だらだらぐうたらものぐさ太郎。




私がいつも通り早起きするのはルークを散歩に連れていくからだけど、休日ともなればたまった洗濯物を干したりいつもはさっと済ませる掃除を本格的にしたりと、朝から結構忙しい。


リヒトは10時くらいまで惰眠を貪っているくせに、寝ぼけながら起きてきてリビングのソファでまたうとうと、そしていつの間にかルルをお腹の上に載せてまた夢の中。



「ルーク、go!」


おりこうなルークは私がソファを指さすと、命令を的確に理解してソファめがけてダッシュして、リヒトの胸の上に勢いよく華麗に飛び乗る。


ぐはっ、とリヒトが攻撃を喰らって声を上げて目を開ける。


お腹の上に乗っていたルルが、リヒトとソファの隙間にぽとりと落ちる。


「うううぅ、っさいクマに襲われた……」


寝起きのかすれた声で呻きながら、リヒトは胸の上に乗ってうれしげにしっぽをぷりぷりと振るルークの頬を撫でる。



「もう起きたら? 今日は午後から買い物に行くんだからね!」


「んん。タマ、コーヒー頼む~」


「シャワー行ってきて。淹れておくから」


「わかったー……うぷっ」



ルークがリヒトの顔じゅうをぺろぺろと嘗めまわす。


されるがままになりながら、彼は左手を伸ばし、自分とソファの間に落ちて狭い空間に心地よさげにすっぽり収まっている白いハンディモップ—―いや、子ネコのルルを取り出して、そっとふわふわのラグの上に置いた。



ルルが窓辺の定位置に移動すると、リヒトはぐるりと体を反転させて、自分もラグにぽとりと落ちて起き上がる。


嵐の中にいたかのようなあちこちに乱れた寝癖の頭を掻き、大きなあくびをしながらのろのろとバスルームに消えていく。


よれよれのTシャツとスウェットパンツの後ろ姿を見送りながら、私はキッチンへ向かってコーヒーをセットする。


やれやれ。

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