ฅ^•ω•^ฅ
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第3話
私が初めてリヒトに会ったのは、7歳の時だ。
うちの父は会社員、母は塾の講師。共働きだったから、私は小さなころから隣の市のおばあちゃんちに預けられることが多かった。
小学生になってからはおばあちゃんが学校に迎えに来てくれて、一緒におばあちゃんちに帰る。母親が22時に塾を終えて迎えに来て、眠ったまま家に連れ帰ってもらう。そんな毎日。
おばあちゃんは早くに夫をがんで亡くし、自宅で着付け教室を切り盛りして女手一つで私の母と叔母を育て上げた。
小さな私は着付け教室の生徒さんたちの人気者だったけど、周りには年の近い子供が一人もいなかった。
そんなある日、生徒さんのひとりが息子を連れてきたのだ。
「たまちゃん、この子はおばさんの息子で
三軒隣の大豪邸。その辺では有名な旧家で、おばさんはその家の若奥様だった。だんなさんはいくつかの会社を経営していて、子供は3人いるらしい。リヒトは3番目の子供で、上の兄姉とは10歳前後くらい年が離れているらしかった。
小学1年生と、3年生。
あまり体格差はなくて、背は同じくらいだった。おばさんの背に隠れたシャイな男の子。それがヒリトだった。
それからリヒトはよく遊びに来て、私たちはしょっちゅう一緒にいた。
春も、夏も、秋も、冬も。
私が豪邸に遊びに行くと、おばさんがおいしいおやつを作ってくれたり、遊園地や動物園に連れていってくれたりもした。
年齢も性別も違うし、仲良しなのは小さいうちだけ……ではなく、中学生になっても、リヒトは私の宿題を見てくれたり、勉強を教えてくれたりした。
さすがにじゃれあって庭の芝生を転げまわるようなことはなくなったけど、それでも私たちはとても仲が良かったほうだと思う。
でもついに、リヒトが高3になって県外の遠くの大学に合格すると……お別れの時がやってきた。
私は16歳、高校1年生。もう一人で留守番できる年になっても、私は相変わらずおばあちゃんちに通っていて、リヒトと会っていた。
リヒトは18歳。ひょろりとアスパラガスみたいに、私の頭一つくらいまで背が伸びていた。
「お願いがあるんだけど」
広い庭のテラスのテーブル。おばさんがお茶を用意してくれた席で、どこか落ち着かない様子でリヒトは下を向いてもごもごとそう言った。
「うん、なに?」
私が首をかしげると、ちょっと待っててと言って家の中に入って行く。
そしてすぐに、スポーツバッグのようなグレーのバッグを肩にかけて戻ってきた。
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