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第2話

休日のリヒトはずっとだらだらしている。



ソファを中心に半径80㎝以内にいろいろなものを置き、行動範囲を設定する。


80㎝は彼が腕を伸ばして届く範囲。


それ以上の範囲は私をこき使う。



大の男が休みのたびに手のかかるぐうたらな甘えん坊になるのだ。




「タマぁ。オムライス頼む~」


「背中がかゆい~掻いて」


「グルーミング頼む~」


「ビール取って~」


「タマー、ターマタマタマ~」




……とまぁ、そんな感じで。


ネコを呼ぶみたいに呼ばないでほしい。


まあ今時、「タマ」なんて名前をネコにつける人は滅多にいなそうだけどね。



私の名前は「タマ」じゃなくて、珠奈たまな



それにしてもリヒトは、休みの日はほんとうに見事に何もしない。


何もしないのに、私が視界内にいないと捜しに来る。


姿を見つけると、そばでごろごろだらだらし始める。


そうして私を追ってまたそばでだらだらして、それを繰り返して一日を終える。


ルークとルルまでもがリヒトのまねをして、まったく同じ行動をとる。


3匹をぞろぞろと連れ歩く、私は群のリーダー?




「休みの日ぐらい、どこかに出かけたいって思わないの? ずっと家でダラダラしてるだけの男なんて、嫌にならないの?」


「そうそう。一緒にどこかに出かけたり、おいしいもの食べに行ったり……」


「彼氏が家の中でずっと後をついてくるなんて、うっとうしくないわけ?」


友達はみんな、そんな感じで呆れる。




「ふたつ年上なんでしょ? そんなふがいない姿ばかり見せられて、よく愛想がつきないよね?」


「一緒に住んで2年くらい?? そんなんでいいの?」




うーん。




私は別に、何の問題もないけどな。


だってリヒトはリヒトだし、甘えん坊なところがルークわんこルルにゃんこと同じでかわいいから。



それに何よりも、リヒトのそんなぐうたらな姿を見られるのは、(人間では)私だけだから。





「私だけ」って、女子は弱いよね。


私も例にもれず、そうみたい。





休みの日は基本的には家でごろごろしてるけど、一緒に出掛けたいときはどこどこに行く、と伝えれば必然的についてくる。


大抵はショッピングモールやスーパーマーケットだけど、買い物すると重いものはいつも持ってくれるしね。


長い買い物にも文句を言わずに付き合ってくれる。



一緒に暮らし始めてそんなに経ってないのは事実だけど、でもずっと昔、実は小さい頃から私はリヒトを知っているから、オフの姿を見てもまったく気にならない。




そう、彼はふたつ年上の私の幼なじみだから。

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