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第7話

あの時は……



小学2年生と4年生。



ある日私たちは近所の廃屋で、段ボールに入れられた小さな白ネコを見つけた。


たった1匹、ぼろきれにくるまれてぶるぶる震えながら弱々しく泣いていた、瀕死の子ネコ。


私たちは食べ物やタオルを持ち込んで、こっそり世話をすることにした。


ネコは日に日に元気に大きくなっていき、私たちを見るとしっぽをピンと垂直に立てて、嬉しそうに寄ってくるまでに元気になった。



でもある日、いつものように廃屋に行ってもネコは飛び出してこなくて……



辺りをさがしてみると、段ボール箱の陰でぐったりと横たわり、お腹に血のにじんだネコを見つけた。多分、野良犬に襲われたのかもしれない。


チビネコはまるで私たちを待っていたかのように、一声悲し気に鳴いて動かなくなってしまった。



私たちは子ネコをそっとぼろきれにくるんで穴を掘って土の中に埋めた。


私はずっとひどく泣きすぎて、ぜんそくの発作を起こしそうになった。


リヒトは必死で私の背をさすり続けながら、私に言い聞かせた。


「泣かないで、タマちゃん。いつかボクが、動物の命を絶対に助けられるようになるから、もう泣かないで」




ああ……


そうか。


私とあの子ネコは、リヒトの将来を決定したのか。




「それで、獣医師になったの?」


「そうだよ」


って、何でもないように軽くうなずくけど。



私も動物看護学科に行ったから、国家試験に簡単に合格できるわけじゃないことぐらい知っている。


大体、獣医学部がある大学自体少ないところから狭き門なのに。




「それと、もうひとり? いっぴき? 先輩んちの大病院から引き抜いてきたから紹介するよ」


「へっ?」


リヒトは奥に行き、白いもふもふを抱いて戻ってくる。ルークが興味を示してしっぽを振り始める。


「ルルだ。ルークとこいつは、名誉職員かな」


「かわいい……まだ子どもだね。ミックス?」


私はもふもふの小さな額をそっと撫でた。ルルはうっとりと青い目を細めた。


「推定1歳。おばあさんが連れてきてたんだけど……その人、介護施設に入ることになって飼えなくなったんだ」


「そう……」


私はルルとルークごと、リヒトをハグした。



「転職のオファーを受けます。よろしくお願いします、院長先生」


リヒトはふっと笑って私の頭を撫でた。


「こちらこそ。雇用条件は後で説明するけど、最重要確認事項を先に提示するよ」


「うん、なに?」


「住み込みの終身雇用ってことで、了承してね」

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