(,,ΦωΦ,,)
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第6話
そして私たちの二度目の離れ離れ期が始まった。
でも、大人になってからの1年なんて……そう悲観するほど長くは感じない。
大型ショッピングモールのペットショップで新米トリマーをしながらバタバタと過ごしていたら、あっという間に1年が経っていた。
ある日、リヒトから連絡が来た。
「約束通り、スカウトに行くよ」
一緒に来てほしいところがあるというのでついて行くと、そこはリヒトの家の前。
でもそれはどう見ても、まったく見慣れない建物に変わっていた。
広かった庭は半分ほど舗装され、駐車場になっている。大きな門は無くなって、ガラスの自動ドアのある白い外装の建物になっている。
ルークを抱いた私は、自分の肩に頭が付きそうなくらい首をかしげた。
「リヒト? 家、どうなっちゃったの?」
「うちの両親はちょっと前に、駅近のタワマンを買ったんだ。ここは生前の財産分与で親父から譲り受けて改築した。俺の病院。で、タマの新しい職場だよ」
「はい? ちょっと……私、動物看護師の資格は取ったけど、人間のはないよ!」
「知ってる。俺の資格も獣医師であって、人間のじゃないから」
「えっ? え? 6年制学部って……医学部じゃなかったの?」
「獣医学部。いいね、タマ。予想通りの反応。長年みんなに口止めしてた甲斐があった」
「ま、まさか……おばさんやうちのおばあちゃんたちに?」
「うん。関係者全員に、ね」
あまりにも混乱しすぎて呆然とする私の手を引っ張って、どっきりが成功したリヒトは満足げに自動ドアをくぐる。
「改装に1年かかったんだ。ドアのガラスにはまだ病院の名前を貼ってないんだけど。名前、知りたい?」
「え? ああ、なんて名前にしたの?」
手をつないだままリヒトは私を振り返って、受付カウンターのうしろの壁を指さして誇らし気に言った。
「たま動物病院」
白壁にブルーグレーの
「な、なんで……私の名前……?」
「獣医師になろうって決めたときから、この名前に決めてたから」
「いつ、なろうと思ったの?」
「10歳の時」
「そんな子供のころから? 10歳って……あっ!」
リヒトが10歳のときって、私が8歳の時。
「まさか、あの時……?」
私たちにとって、忘れられない事件が起こった時。
「うん、そうだよ。あの時だ」
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