第2話 サポーターとの出会い

 「おい、マスター」


 突然の声に驚いた。周りを見渡しても誰もいない。気のせいか…それに、どこかで聞いたことがある声だったような…


 「こっちだこっち、下だ」


 その声を聞き、下に目を向ける。すると、そこには小さな黒い猫が座っていた。


 「猫?」


 俺は驚いてその猫をじっと見つめた。まさか…いや、そんなはずはない。ただの猫だろう。だが、その猫は再び口を開いた。


「おいおい、そんなに驚くなよ」


「…しゃべった?!なんで猫がしゃべってんだ!?」


 俺は慌てて後ずさったが、猫は何食わぬ顔で俺を見上げている。


「そんなに驚くことか?普通だろ、これくらい」


「いや、普通じゃねえよ!猫がしゃべるとかおかしいだろ!」


「まあ、お前がいた世界からしたら普通じゃないよな。こっちの世界は普通、猫は

じゃべ…らないな」


「やっぱりしゃべらないんじゃないか!」


「わるいわるい、お前さんに乗ってあげたってだけよ」



「………」

「………」


二人の間に静寂が続く。


「で?」


「で?とは?」


「君が何者なのかだよ。」


「ボク?ボクはお前さんのサポーターさ」


「サポーター?」


「そう。お前さんはこれからダンジョンマスターとして生きていく。お前さんのこと

をサポートすることが役割さ」


「ふーん。そういえば君の名前なんていうの?ずっと君っていうのもあれだし」


猫は考え込む。


「ボクの名前?うーん、お前さんが考えてくれないかな?実をいうとボクは名前がないんだ」


「俺が名前を?!まあ、別にいいけど」


 驚きながらも、承諾する。


「かっこいいのにしてくれよ」


「うーん、黒い猫だから…黒…クロ…!クロってのは?」


黒い猫は呆れながら言った。


「安直すぎないか?」


たしかにそうださすがに安直すぎる


「それじゃあ、リオってのはどうだ?」


「リオ…か、うん!いいなさっきのと比べて圧倒的に良い!」


リオは尻尾をぶんぶんと振り、喜んでいる。


「じゃあ、リオに決定だな!」


「ありがとな!これからはリオとしてよろしく!」


リオは大喜びで小さな体を跳ねさせた。


「でも、どうしてリオって名前にしたんだ?」


「響きが好きなんだ。なんか親しみやすくて、君にぴったりだと思ったら」



「そうか、ボクにぴったりか。嬉しいな!」


 リオはニコニコと笑っている。


「ところでお前さんの名前を聞いてなかったな」


「そういえばそうだったな。俺は晴。南条晴だ」


「ハル。いい名前だな」


「そ、そうか?ありがとう」


 晴は照れながら言った。


「そんじゃあ、ハル。これからのことについて決めていこう」


「ん?あ、ああそうだな。すっかり忘れてた」


「それじゃあまずは、マナについて確認しておこう」


「マナ?そういえばそんなのあったっけ」


「この世界では、魔法やスキルを使うためのエネルギーさ。ハルがダンジョンマスターになるためには、まず自分のマナの量や性質を知ることが重要だ」


「なるほど。じゃあ、どうやって確認するんだ?」


「簡単さ。自分の内側を感じてみて、マナを引き出してみるんだ」


 晴は深呼吸して目を閉じ、自分の中にあるエネルギーを感じ取ろうとした。心の中で、かすかに温かく、少しずつ力強くなっていく。


「お、おお、これがマナか…」


「そうそう!それを感じたら、次にそのマナを形にしてみよう」


「形にするって…どうやって?」


「自分の意志でマナを操作するんだ。例えば、手のひらに集めてみるとか」


 晴は先ほど感じたマナを手のひらに集中させようとした。すると、徐々に光が現れ、青白い輝きが手の中に宿る。


「すげえ、できた!」


「おお!すぐにできるなんてスゲェな!」


「お?そうか?」


「そうだな。才能あるのかもな」


 晴は少し照れながらも、嬉しさがこみ上げてくる。自分にこんな力があるなんてな。


 「でも、これがダンジョンを作る力になるんだろ?」


 「そうだ。マナを使ってモンスターを生み出したり、トラップを仕掛けたりするのがダンジョンマスターの仕事だ」


 「マナをどうやって使うんだ?」


 「そうだな。まずはマナの操作に慣れる必要がある。もっといろんな形にしてみるといい」


 晴は頷き、手のひらの光を少し大きくしてみようと試みる。青白い光は次第に強くなり、手のひらの中で弾けそうな勢いを見せる。


 「おお、すごい!こんなになるのか!」


 「その調子!その光を何か形にしてみてくれ」


 「形か…どういう形がいいかな?」


 「たとえば、光の球とか、剣の形にしてみるのも面白いぞ」


 晴はしばらく考えた後、光の球を作ることに決めた。心の中で「光の球」とイメージを描き、それを手のひらに送り込む。すると、青白い光が丸くまとまり、まるで小さな星のように輝き始めた。


 「できた!見て、リオ!」


 「おお!すごい、ほんとに光の球になったな!それを使えば、冒険者に道を示した

り、暗い場所を照らしたりできる」


 「なるほど、そんな使い方があるのか!」


 晴は嬉しさと驚きが入り混じった感情を抱きながら、さらに試行錯誤を続けた。次は、リオの提案を受け入れて、剣の形を試してみることにした。


 「剣の形か…難しそうだな…やってみるか」


 彼は再び集中し、マナを剣の形に変えようとした。すると、光は細長く伸びていき、次第に剣の形を形成していく。


「お!できた!」


「すごいな!少し形は歪だが、短時間でそこまでできるとは、かなりすごいほうだぞ」


「ほんとに?ありがとう!でも、まだまだ完璧じゃないな…」


「大丈夫だ、最初は誰でもそうさ。使い続けているうちに、自然と上手になるから」


 晴は自分の作った光の剣をじっと見つめる。確かに形は不完全だが、自分の意志で作り出したものだと考えると、やる気が出てきた。


「今日のところはこのくらいでいいだろ」


 リオはストップをかける。


「え?なんで?もう少しいけるよ?」


「いや、だめだ。ステータス画面を見てみろ」


 そういわれてステータス画面を開く。


「ステータスオープン!」

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