第5話 ダンジョン拡張

「冒険者とか…入ってこないのか?」


 心配そうにしながら聞いた。


「入ってくるぞ」


「入ってくるのかよ!」


 驚きのあまり大きな声を出してしまった。


「まあ、心配するな。このダンジョンは出来立てだ。ゆえに、このダンジョンの存在はまだ知られていない」


「それなら当分は安全ってことだよな?」


「そういうことだ」


 その言葉を聞き、胸を撫で下ろす。


「だけど、いずれは来るんだよな?」


「そうだな。だから早めにこのダンジョンを冒険者を迎えられるくらいにしよう

か」


「分かった。それじゃあ、さっそくダンジョンを広げよう」


「ああ、そうだな」


 リオは冷静に言った。


「どれくらい広げるつもりだ?」


 リオが晴に尋ねると、晴は周りを見渡しながら答えた。


「とりあえず、今の倍くらいの広さにしようかな。これで十分冒険者が迷い込んでも

対処できるし、魔物を配置するスペースも増えるだろ」


 晴は慎重に考えながら言った。


「いい考えだ。広げたら、次に通路を複雑にすることを考えよう。罠や待ち伏せポイ

ントも設ければ、冒険者は容易には突破できなくなる」


 リオは計画的に進めるようアドバイスを続けた。


 晴は頷き、ダンジョンの床に手をかざした。そして彼のマナが周囲に広がり、床がゆっくりと動き出し、さらに奥へと広がっていく。新しい部屋と通路が次々と形成され、ダンジョンは少しずつ形を整えていった。


「おお、いい感じだな」


 リオは広がるダンジョンを見渡した。


「これでまずは十分だな」


 晴は汗を拭いながら息をついた。


「よし、次は階層を増やそうか」


 晴はダンジョンの広がりを確認しつつ、準備を整えた。


「階層を増やすとなると、下に掘る感じか?」


 晴がリオに確認する。


「そうだ。深さが増せば、それだけ冒険者にとっても攻略が難しくなるだろうし、後々強い魔物を配置しやすくなる。多層構造にするのはダンジョンを強固にする基本だ」


「それなら、まずは三階層目を作ろうか」


晴は床に視線を落とし、手をゆっくりとかざした。彼の体からマナがゆっくりと流れ出し、地面に染み込んでいく。瞬間、ダンジョン全体が微かに震え、床が次第に下へと沈み始めた。空気が重くなり、周囲の景色がゆっくりと変わっていく。


しばらくすると、足元の地面が滑らかに沈み込み、新たな階層への入り口が現れ

た。階段が螺旋状に下へと続き、さらに深い闇へと導いている。三階層目への道が

無事に完成したのだ。


「おお、うまくいったな!この調子で、階層をもっと増やしていくか?」


晴が尋ねるが、リオは冷静に言った。


「いや、まずはこの三階層目をしっかり作り込んでからにしよう。階層を広げるのも

大事だけど、内部をしっかりと設計して、ちゃんと罠や部屋を整えておかないと。せ

っかくのダンジョンなんだし、簡単には突破できないようにしておかないとな」


「なるほど、確かにそれは一理あるな。広げるだけじゃなく、戦略的に作り込むこと

が重要だ。じゃあ、まずは広がった一階層と二階層に、いくつか部屋を作ってみよう

か」


晴は再び床に手をかざし、今度は複雑な部屋と通路を形成するためにマナを注ぎ込んだ。彼の指先から放たれるマナが空間に広がり、部屋が徐々に形作られていく。

石の壁が立ち上がり、扉が設置され、ダンジョンの内部は次第に迷宮のような複雑な

構造へと変わっていく。


「まず、冒険者を惑わせるために通路を複雑にして、罠や隠し扉を仕掛けておこう。

それから、部屋ごとに異なる罠を設置するんだ。たとえば、一つの部屋には落とし

穴、もう一つには毒ガスを仕掛ける。冒険者たちが油断できないようにしておくべき

だな」


リオは慎重に説明しながら、罠の設置場所や効果について細かく指示を出した。晴

もそれに従い、次々と罠を仕掛けていく。床に隠された落とし穴、壁に仕込まれた

毒針、天井から落ちてくる巨大な岩…一つ一つの罠が、冒険者にとって大きな障害と

なるように設計されていく。


「いい感じだな、これならどんな冒険者も簡単には突破できないだろう」


晴は広がった部屋と罠を見渡し、満足そうに微笑んだ。


「これで第一層と第二層は完成だな」

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