第12話 ユニーク

 彼女の存在感は圧倒的で、目の前に立つその姿に息を呑む。漆黒の髪が風に揺れ、紫の瞳が俺をまっすぐ見つめている。

 彼女が俺のほうに近づいてくる。それに反応するように俺は一歩後ずさりをした。

 紫の光を帯びた瞳に圧倒され、心臓の鼓動が高鳴る。次の瞬間、彼女はゆっくりと膝をつき、ひざまずいた。


「…?」

 

 俺は言葉を失い、思考がうまく回らなかった。

 

「マイマスター、この身はすべて、マスターの意のままに。」


 俺はキョトンとする。


「何を固まっている。ハルが召喚したんだろ」


 その言葉にハッとする。


「あ、そっか。ええっと、よろしく…ね?」


「なんで疑問形なんだよ」


 リオが突っ込みを入れる。


「はい!よろしくお願いいたします!」


 ダークエルフは再び頭を深く下げる。


「うん。よろしく…、あ、そうだ。君、名前なんていうの?」


「はい!私の名はセリス・アシュレイと申します!」


「セリス・アシュレイ か、セリスでもいいかな?」


「はい!どうぞお好きなようにお呼びください」


「分かった。それじゃあセリスで」


「は!ありがたき幸せ!」


 二人がそう話している間リオはずっとセリスの方を見ていた。


「リオどうしたんだ?」


 言われてやっと口を開く。その顔は目を少し細め、かすかに笑っているように見えた。


「お前…ユニークだろ」


 リオの言っていることが理解できない。


 少しの間沈黙が流れ、セリスは口を開く。


「おっしゃる通りです」


 セリスは淡々と返す。


 さっきから何を言っているんだ?二人だけが分かって、なんか俺だけが仲間外れみたいだ。


「なあ、説明してくれよ。ユニークってなんだ?」


 リオとセリスは俺の方に顔を向ける。


「ユニークっていうのはその種族に稀に生まれる個体のことだ。そして、ユニークは

生まれながらにして強いステータスやスキルを持っているんだ」


「ふーん、つまりセリスは特別な存在ってこと?」


「そういうことになります」


 淡々と答える。


「強いって言ってもどのくらい強いんだ?」


「うーん、そうだなぁ。ハル、セリスに手をかざしてみろ」


「手をかざす?」


 俺は戸惑いながらも、言われた通りにセリスに手をかざす。すると、目の前にステータス画面が浮かび上がった。



名前: セリス・アシュレイ  種族: ダークエルフ (ユニーク) 

レベル: 230

HP: 845,000/845,000

マナ: 1,230,000/1,230,000

体力: 580,000

攻撃力: 157,000

防御力: 139,500

知識: 19,800

敏捷性: 220,000

スキル:剣術(レベル124)

    闇魔法(レベル110)

    弓術(レベル117)

    精霊召喚(レベル91)

    魔力吸収(レベル86)

    隠密(レベル100)

    呪詛(レベル92)

    魔法反射(レベル95)

    幻影(レベル93)

    高速再生(レベル90)



 セリスのステータスを見て目玉が飛び出るくらい驚いた。


「は?!強すぎだろ!!」


「光栄です」


「いやはや、ここまでだとは思わなかった」


リオも驚いている様子だった。


「なんか…強過ぎっていうか、桁がおかしいっていうか、もうバグってんだろ!」


「ハルってどのくらいだっけ?」


「ええっと、ちょっと待って」


右手を前に突き出す。


「ステータスオープン!」


半透明な板が出てくる。




名前: ナンジョウ ハル  種族: 人間  職業: ダンジョンマスター

レベル: 35

HP: 3,200 / 3,200

マナ: 3,300 / 3,800

体力: 1,800

攻撃力: 320

防御力: 260

知識: 420

敏捷性: 150

スキル: ダンジョン設計(レベル3)

魔物召喚(レベル8)

魔物育成(レベル2)

罠設置(レベル3)

火魔法(レベル9)

氷魔法(レベル9)

風魔法(レベル8)

光魔法(レベル8)

闇魔法(レベル8)




「よっわ!!」


「ブフッ」


 リオは思わず吹き出す。


「笑うなぁぁ!!」


 少し涙目になりながら叫ぶ。


「あははは、いやー、ごめんごめん。だって、セリスと比べると、さすがに…ブフッ」


「まだ笑うかぁぁ!!」


 リオは笑い続ける。


 しかし、セリスはその様子を一人笑うこともなくただ見ていた。


「てか、お前はいいのかよ。マスターがこんなに弱くて」


 微笑しながらセリスに聞く。


「問題ありません。マスターはマスターです」


「セリスぅ…」


 俺はその言葉にうれしくなる。


「それに…いえ、何でもありません」


 セリスは一瞬言いかけたが、すぐに口をつぐんだ。


「ん?今何か言おうとした?」


 俺は気になって問いかける。


「なんでもありません」


「ん?そうか」


 深く詮索するのはやめておこう。


「さて、セリスだけじゃなくて他の魔物をどんどん召喚していこう」


 リオが提案をしてくる。


「そうだな」


 そして俺は右手を前に突き出す。

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現代知識を駆使して最強ダンジョンを作り上げる やまもどき @yamamodoki

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