第3話
先ほどの目撃地点へ向かおうとするも、どうやら目撃地点を聞いていなかったようだ。
後戻りをしようにも何故か拒否した。客数も少なく『2本目』を催促されるようで。
今の所、事故に遭うなどという最悪の予感は免れた。
そのまま柳六郎は自宅の裏の畑へと足を進める。
それまた広いのだ。畑の色に擬態しているのかあの茶虎は。そんなふうに目を細くしているとどこからともなく鈴の音がした。
柳六郎は「お麩!」と叫んだ。
違う、違う違う違う違う。
探していたのは黒い猫じゃない。
というよりも野良猫ではなかったのか、と。
自宅から持参した懐中電灯をつける。一点しか照らさないあれだ。
柳六郎は瞬時に目を逸らし、ひたすらお麩を探す。
畑の向こうなのか、だとすれば畑を横断しなきゃならない。堂々と畑の真ん中を歩くことはできない。
というわけで端の端の方を歩いて渡ることにした。
端には住宅街の裏、どこからかは湯気が立ち、美味しそうな匂いがする。腹も鳴ってきた。
柳六郎は嫌なことを思ってしまった。
黒い猫は不幸の象徴、黒い猫には申し訳ないがいつからそんな風に言われているのだろう。間違ったことが伝承として?というのもあるかもしれない。とにかく黒猫には悪いことをしたなどと頭の中で自己完結した。
言い忘れたのだが私が履いているのは下駄だ。
その為、土が深々と入る。なんせこの夜の暗さだ。
ズカズカと土が入る。
いや待て、待てそれよりも問題が。
今更ではあるが正気に戻った。
下駄であり、この服装の様だ!
どう考えても私は不審者なのだ!
猫を探しにきた 雛形 絢尊 @kensonhina
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。猫を探しにきたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます