第2話
柳六郎は人見知りである。
かなりの人見知りである。人と会話をする際も目を合わすことができない。お釣りをもらう際も、挨拶を交わす際も。しかしながら決断ついた。
我が街のコンビニ『ハッピーマート』の店員が我が猫を目撃していたとしたらと。
こんな昭和の文豪のような背格好でこの街をこれ以上歩かなくて済むと。
これは寝巻きである。柳六郎はなかなか家から出ない。
出るとしても3日に一回、買い出しのためだ。
そんな3日のうちの1日目、普段なら家に籠ると決めている日である。
覚悟を決めた。自動ドアが開く。
「らっしゃいませ」と店員が言う。
恐る恐る店員に近づいていく。
さながら警戒して近づく猫のように。
「このくらいの茶虎の猫を見ませんでしたか?」
と手で大凡の大きさだと両手で見せる。
「茶虎?」
と店員は聞き返す。
「オレンジ色のような茶色のような色です」
「ガーフィールドみたいな?」
核心をついたように頷く。
「あ、さっき」
と期待するような台詞が返ってくる。
「黒い猫なら見ましたけどね」
その黒猫よ、、と気持ちが落胆した。
どうしてこのタイミングでと。
我が家の『お麩』はいい子だ。
怒りを覚えている私もいるが、いい子なのだ。
より一層、茶虎の猫『お麩』を見つけ出したいと決心したのだった。
すると話を聞いていたかのように店内の後ろから
「私見ましたよ茶虎の猫」
と若い女性が声をかけてきた。
所謂、ギャルという類の女性だ。とても苦手という気持ちも少しは芽生えたが、我が猫のためだ。
「後ろの畑で大体20分前かな、見ましたよ!」
ハッと目覚めたかのように柳六郎は
「分かりました!ありがとうございます!」
と足早にその場を立ち去ろうとしていると
先ほどの男性店員が「あ、ちょっと」
ん?と後ろを振り返ると
「今日限定で500円以上お買い上げでフランクフルト差し上げます如何でしょう」
と先ほどより一段階大きな声で。
何故、フランクフルトなのか。という疑問、呼びかけは大切であること、様々なことが頭の中を飛び交う。
もし、もしもだ。
何かの買い出し、例えばバーベキューで5,000円この店で必要なものを買うとしたらフランクフルトが10本貰えるということだろう。
いやいや、迷惑だと思っているのは私だけだと思う。
むしろラッキーであるのだ。
「大量に発注しちゃって」
と女性の声もあり私は、いつもと同じ銘柄のタバコとコーヒーの缶を一つ買った。それでフランクフルトを持っている。
さあ再開だ。私の猫はどこにいる。
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