作品紹介:エッセイ・ノンフィクション
1.読書日記(時々スコップレポート)/秋田健次郎(紹介No. 10)
今回は、秋田健次郎さんの『読書日記(時々スコップレポート)』を紹介いたします。
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紹介No. 10
URL:https://kakuyomu.jp/works/16817330668807593253
話数:25(2024/10/9現在)
文字数:35,579文字(2024/10/9現在)
投稿状態:連載中
セルフレイティング:なし
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読書録が読書日記を紹介するなんて、冗談ぽくなってしまいましたが、私のエッセイとは異なる作品を違う切り口で紹介をされていますし、なにより私は秋田さんの作品で「スコップレポート」という言葉も知りました。それに、私が自分のエッセイでやりたいことが批評じゃなくて感想と作品紹介だと改めて確認させてくれた作品でもあります。
「スコップレポート」とは、ランキング上位に浮上せずにあまり知られていない良作(悪く言えばマイナー作品)を掘り上げて(=スコップして)紹介することです。秋田さんの読書日記は、通常の書籍化されている小説の感想に加え、カクヨム投稿作品も紹介しており、それを「スコップレポート」と呼んでいます。なお「スコップ」については、本エッセイの『物書き徒然日記』の項「7.スコップ/スコッパーって何?」で詳細に語っているので、「スコップって土堀り道具じゃないの?」と疑問に思う方はそちらをご覧下さい:
https://kakuyomu.jp/works/16818093085464641449/episodes/16818093086073076142
秋田さんの「スコップレポート」は最新話の第25話までで2回あり、現代ドラマジャンル2作を紹介しています。正直言って、両作品とも「マイナー作品をスコップした」など言えないほどの力作ですが、秋田さんの作品紹介文にあるように、秋田さんは「スコップレポート」をそういう意味ではなく、純粋に「カクヨム内の小説を紹介する」意味で使っています。
秋田さんのスコップレポート1回目は、特撮ヒーローが市長選に立候補する現代ドラマ『アストロQ』(大石雅彦さん作)、2回目は私もカクヨム他でフォローさせていただいている虹乃ノランさんの作品で、途中失明した少年が周囲の人々と愛犬に支えられて成長していく人間ドラマ『そのハミングは7』(エンタメ総合部門のカクヨムコン9特別賞受賞作)です。秋田さんは両作品の魅力を余すことなく伝えてくれており、両方とも読みたくなること必死です。
【スコップレポート】大石雅彦さん「アストロQ」
https://kakuyomu.jp/works/16817330668807593253/episodes/16818023214189330121
【スコップレポート】虹乃ノラン さん「そのハミングは7」
https://kakuyomu.jp/works/16817330668807593253/episodes/16818093073474828522
ちなみにスコップレポートではないのですが、小説家になろう投稿作品の書籍版であるダークファンタジー『インスタント・メサイアI』(田山翔太作)も、秋田さんは紹介しています。続巻は未出版、なろう版の原作も2020年8月から更新のない状態で、秋田さんのおっしゃる「Web小説勢の世知辛さ」に私も共感し、息の長いWeb小説投稿活動のためにモチベーションや環境を維持していく難しさを痛感しました。
もっとも、『読書日記(時々スコップレポート)』のタイトルからお分かりのように、秋田さんの読書日記の真骨頂は、書籍化されている小説の感想と紹介でしょう。『ぼくらの七日間戦争』(宗田理作)のような超有名ベストセラーや各種小説コンテストの受賞作品の他、アガサ・クリスティーのミステリーのような古典も取り上げています。それにカズオ・イシグロみたいな純文学から児童文学、ライトノベルまで幅広く紹介しているのですが、内容的にもミステリー、SF、ファンタジー、医療小説や青春小説、クライム小説など紹介した作品のジャンルは多岐にわたります。そのとてつもなく幅広い読書分野と、的確なのに簡潔で分かりやすい感想を目の当たりにするにつけ、秋田さんが本を深く読み込んでいる相当な読書家であり、本への愛があふれているのが分かります。
そのため、書籍化されている小説を読みたい方にも『読書日記(時々スコップレポート)』は興味深く、どの本を読むか迷った時の選択にも役立つと思います。私も秋田さんの感想を読んで個人的に『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇美緒著)や『ラウリ・クースクを探して』(宮内悠介著)、『旅する練習』(乗代 雄介著)、『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ著)が特に気になりました。
ついでに言うと、ちょっと間抜けでかわいい「カバヒコ」を表紙絵で見たくて「リカバリー・カバヒコ」(青山美智子作)を検索してしまいました。私は、Web小説を投稿し始めてからWeb小説ばかり読むようになってしまいましたが、『読書日記(時々スコップレポート)』を読んで紙の小説の世界にも戻りたいと思いました。
秋田さんは書店POPで目についた本も取り上げているのですが、3冊とも当たりだったそうで、やはり手書きPOPは特に信用できるとのことです。手書きPOPはWeb広告みたいに無機質じゃなくて、その書店員さんの好みや人間味があふれていますよね。最近の書店の状況を思い出して切なくなりましたが、こういうPOPの伝統がなくならないことを祈っています。
『読書日記(時々スコップレポート)』では、児童小説が紹介されることも意外に多く、児童文学のポテンシャルに気付かせてもらえました。児童小説では分かりやすさを求めて表現は必要最小限、なおかつその物語に必須要素をしっかり盛り込むという難しい技を作者はやり遂げなくてはなりません。それに加え、秋田さんの紹介した児童小説はどれも大人が読んで違和感のない文体で書かれています。情景描写や凝った文学的表現などを取り除いて「物語の本質だけを抽出」する児童文学の「奥深さ」を秋田さんは思い知ったと言います。やたらダラダラと長く書きたくなってしまう私みたいな人間には耳の痛い話です。
秋田さんは、一度は児童小説に挑戦すべきと小説執筆をする者を叱咤激励し、カクヨムユーザーなら角川つばさ文庫小説賞に応募するのはどうかと勧めています。それだけでなく、歴代の角川つばさ文庫小説賞受賞作品を紹介・分析して受賞するためには何が必須なのか、創作論『君は角川つばさ文庫小説賞を知っているか?』も書いています。児童小説のコンテストに応募しようと思う方は必読です!
『君は角川つばさ文庫小説賞を知っているか?』
https://kakuyomu.jp/works/16818093075929843735
秋田さんは、ご自分の分析を活用して子供向けのオカルトミステリー『めいかいトランシーバー 〜キツネ様の都市伝説を解き明かせ!〜』も投稿しています。なぜただのミステリーじゃなくて「オカルトミステリー」なのか――上記の角川つばさ文庫小説賞の分析を読めば分かります!
『めいかいトランシーバー 〜キツネ様の都市伝説を解き明かせ!〜』
https://kakuyomu.jp/works/16818023213479590810
今年も第13回角川つばさ文庫小説賞一般部門の応募がカクヨム経由で8月末まで募集されていました。前回の角川つばさ文庫小説賞の結果は、今年2024年に発表され、無月蒼(無月弟)さんが『アオハルチャレンジ』(書籍名『アオハル100% 行動しないと青春じゃないぜ』)で金賞を受賞されています。そのインタビュー記事がちょうどつい先頃(2024年10月5日)、カクヨムからのお知らせに掲載されました:
https://kakuyomu.jp/info/entry/mugetsu_interview
皆さんも来年チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
『読書日記(時々スコップレポート)』の私のレビューはこちら:
https://kakuyomu.jp/works/16817330668807593253/reviews/16818093086268417471
【2024/10/21追記】
秋田さんが読書日記最新記事にて、無月蒼(無月弟)さん作のカクヨム版『アオハルチャレンジ』と書籍版『アオハル100% 行動しないと青春じゃないぜ』を比較されています。
「【読書日記+ちょっと創作論】「アオハル100%」「海外SFハンドブック」「第五の季節」」(2024/10/20)
https://kakuyomu.jp/works/16817330668807593253/episodes/16818093087067234420
「元々の作品のどういった部分が評価されて金賞を受賞したのか、逆にプロの編集者の目線が入ることで作品はどう変化するのか」比較すると、どの創作論を読むよりもためになるとおっしゃっています。私も100%それに同意です。次回の角川つばさ文庫小説賞に挑戦する方には、両方のバージョンを読むことをお勧めします。
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