【読書日記+ちょっと創作論】「アオハル100%」「海外SFハンドブック」「第五の季節」

 急に秋になったと思ったら、やっぱり夏が戻ってきて、かと思えば今日はまた肌寒い。

 気温差がすごくて自律神経がバグってしまいますね。





 無月 蒼「アオハル100% 行動しないと青春じゃないぜ 」


 こちら、昨年度の角川つばさ文庫小説賞の金賞受賞作品。


 「アオハルチャレンジ!」という題でカクヨムから応募された作品で、カクヨム版の方は今でも読むことができます。

 https://kakuyomu.jp/works/16817330660037719878


 カクヨム版の時点でSNSという現代的なテーマを主題にした新規性のある作品だったのですが、書籍化された本書はその良さを最大限に活かしつつ、展開は大幅に加筆されています。


 そんで! ちょっとこれ本当に小説を書いてる人全員やった方がいいと思うんですけど! ぜひともカクヨム版と書籍化版の両方を読んでみて下さい!


 「物語はこう作るんだ!」という何よりの勉強になります。


 カクヨム版と比較すると、加筆ってより書き下ろしじゃない?ってくらい変更されてて、しかもその変更点が一つ残らず“物語”としての強度を格段に上げている。


 例えば、「主人公が何かアイデアを思いつく時は、そのきっかけが必要である」「物語におけるイベントは話の本筋と関連していなければならない」みたいな、脚本術の参考書に書いていそうなことを実践として明確に感じることができます。


 物語は極限まで抽象化すると「因と果」ってことなのかなと今回の経験から思った。伏線とその回収も「因と果」の一種なんですけど、それよりももっと広い意味での何かがある気がする。


 今の私の力ではこれをちゃんと言語化することはできないけど……


 とにかく! 下手な創作論を読むより、本作のカクヨム版と書籍化版を順番に読む方がすごく身になることが多いと思います。


 元々の作品のどういった部分が評価されて金賞を受賞したのか、逆にプロの編集者の目線が入ることで作品はどう変化するのか。


 私がこれまで読んできたどの創作論よりもためになったと感じています。


 と、創作論寄りの話ばかりになってしまいましたが、お話の内容は間違いないです。SNSの楽しさと怖さを勉強できつつ、児童文庫らしい胸キュンな描写も数多くある。表紙のイラストがめちゃくちゃいいし、クルミくんが可愛すぎる!







 早川書房編集部「海外SFハンドブック 」


 SFというジャンルの全体像を把握してみたくて手に取った一冊。

 SF御三家と呼ばれる人たちから、年代順に有名なSF作家を紹介していく構成で、まだまだ知らない人が多いなぁ、とSF界隈の広さを改めて思い知った。


 特にSFというジャンルの最初期の頃は、出版されるSF作品を全て読むことができた、という点が書かれていて驚いた。

 昔は全部終えてたんだぜ、的な意見で言うと初期のVtuber文化が思い出される。


 日本の作家が紹介するベスト10なども掲載されていて、興味をそそられる作品も結構あった。


 ソラリス、ハイペリオン、地球の長い午後、ファウンデーションあたりはSF好きを名乗るにはマストだと思うので、今後読んでいきたいですね。


 本書全体のうち四分の一が早川が出版したSF小説の一覧になっていたので、その点は少し拍子抜けではあったけど、おおむね満足の一冊でした。


 ちなみに、個人的に一番好きな「星を継ぐもの」のJ・P・ホーガンが紹介されていなかったのがちょっと不服です笑。

 多分、早川じゃなくて創元SF文庫だからってことなんでしょうね。






 N・K・ジェミシン「第五の季節 」


 本作から始まる三部作が三年連続ヒューゴー賞を獲ったというすさまじいシリーズ。


 最初読み始めた時は、世界観が明らかにファンタジーで(巻頭に地図が載っているというファンタジー小説あるある)「あれ?ヒューゴー賞ってSFの賞じゃなかったっけ?」と思っていたら……


 なるほど、そう来たか。という感じです。


 そもそも、ファンタジーでありながら舞台は「地球」と明言されてるし、アスファルトとか電気とかちょっと「ん?」って思うような描写はあったんですよね。


 とはいえ、本作は三部作の一作目、まだまだ山のような謎が残ったまま。なんなら、プロローグですらある。


 序盤はちょっと読みにくい文体と、期待していたものとは違う雰囲気とで、読み進めるのが遅かったけど、中盤以降はどんどん惹きこまれていった。


 ぜひとも、続きを読みたいところだけど、分厚い海外SFというのでハードルが……


 しっかり、腰を据えて長編を読みにかかる気持ちで読み始めた方がいいシリーズです。三体みたいに一作目だけである程度完結してる、とかではないので。

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