【読書日記】「九マイルは遠すぎる」「毒入りチョコレート事件」「文豪、社長になる」
ここ1週間で急に寒くなったと思ったら、今日はそこそこ温かい。本当に自律神経が爆発しそうです。
自律神経が爆発すると自然と読書頻度も落ちてしまって大変。
ハリイ ケメルマン「九マイルは遠すぎる」
ほんタメというYoutubeチャンネルがあるのですが、そこでちょくちょく名前が出ていて気になっていた作品。
「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」という一文から事件の真相を解明するという衝撃的な推理が有名。
どうも「安楽椅子探偵」というジャンルの代表例らしい。ミステリには色々なサブジャンルがあるんですね。
本格ミステリの本質は短編である、という著者の思想の通り、短編集である本作はまさしく本格ミステリという味わいで、論理ゲームの域にすら達している。
ミステリの論理ゲームとしての側面を知ったのは「文学少女対数学少女」という作品からなんですけど、出版時期で言えば「九マイルは遠すぎる」の方が余裕で先。
理詰めを徹底する作風は多少の好き嫌いが分かれるかもしれないが、ミステリ好きは必読の一冊です!
アントニイ・バークリー「毒入りチョコレート事件」
こちらもミステリマニアの間で知らない人はいないと言われる有名作。ちなみに、本作も知ったきっかけはほんタメチャンネル。
いわゆる「多重解決」と呼ばれるジャンルの原点。
多重解決というのは、一つの事件に対して複数の解法(推理)が登場するジャンルのこと。
このジャンルはいまだに後継作品がどんどん書かれていて「その可能性はすでに考えた」なんかは多重解決ものの最高傑作と言われてるとかなんとか。
作中では“犯罪研究会”の面々が順番に推理を発表していく訳ですけど、その推理のクオリティが後半に行くほど上がっていくのに感心した。
そもそも、たった一つの推理すら思いつかない凡人からすれば、質の異なる複数の推理を用意するなんて作者は一体どんな頭してるんだ。
しかもこれが1929年に出版されているという衝撃。
上で紹介した「九マイルは遠すぎる」とは違って、しっかりミステリしつつ、エンタメ展開も意識されているのでページをめくる手が止まらない。
ラストにも衝撃のオチが用意されていて、多重解決というジャンルの初手にしてはクオリティが高すぎる。
全体の9割くらいが研究会メンバーによる推理披露パートに当てられている都合上、妙にもったいぶった語り口が、初めのうちは気になっていたけど、だんだんそれも味に感じてくる。
ミステリの教養としてもそうだし、何より今読んでも全く見劣りしない一冊です!
門井 慶喜「文豪、社長になる」
普段は中々読まない、ノンフィクションベースの小説。
言わずと知れた文藝春秋の100周年を記念して書かれた本作は、文藝春秋の創始者である菊池寛の生涯を追う形で描かれる。
読書好きと言いつつ、文豪史についてほとんど知らなかったので、芥川龍之介や川端康成といった超有名な作家の人間的な描写が新鮮だった。
当たり前なんだけど、文豪と呼ばれた人々にも学生時代はあったんですよね。
芥川賞や直木賞の設立された経緯や、戦前、戦中の出版業界の内情。そういった何気に知らなかった事実を色々知ることができて読んで良かった。
特に大正から昭和にかけての世間の空気感みたいなものがありありと伝わってきて一種の戦争小説とも言えそう。それくらい、時代の描写がリアル。
文豪たちの
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