第7話 バズったことを知る兄妹

「「———ほぇぇ……ホントにバスってらぁ」」


 俺と凛音は魔法使いみたいな美少女から借りたスマホで自分達の姿が撮られている動画を視聴した。

 その感想が、これである。

 我ながら語彙力なさすぎコメントでビックリしてるわけだが……。


「……妹よ、撮られてるって気付いてた?」

「ふっ……愚問だよおにぃ。———もちろん全く気付いてないが?」

「カッコつけて言う所ちゃうねん」

「あたっ」


 俺にデコピンされたおでこを押さえて、あざとく頬を膨らませる。

 まぁそれでも天使だから全く違和感ないし、うざくもないんだが。


 それにしても、まさかモンスターを撮ってる俺達が撮られてたとは。

 被写体を撮ってると思ったら被写体にされてた件。

 まぁでも。



「別にいっか」

「だねだね。困ることもないしー」



 これに尽きる。

 別に顔バレした所で、犯罪も犯してないんだし特に不都合もない。

 投稿に付けられた文も『面白い兄妹がいた』って書いてあるし、別に害そうとしているわけではなさそうだ。

 だからこの反応は普通だと思ったのだが、


「いや軽っ!? 軽すぎですよお2人さん!? 知らない内に撮られてたんですよ!? 普通は怖い、とか思いません!?」

「「全然」」

「こりゃ本物ですわ」


 なぜか当事者である俺達より渋い顔して頭を抱える美少女。

 てか何か自然と会話していたが、そもそもこの美少女は何者なのだろうか。


「なぁ、アンタって誰なん?」

「あ、私は八神絵美やがみえみです。これでもD級覚醒者なんですよ!」

「「へー、普通に凄いじゃん」」

「あ、あの……そんな真正面から褒められるのは想定外なのですが……」


 自分で自慢しておいて、いざ素直に褒めて上げれば、恥ずかしそうに鍔の広い魔女が被るようなとんがり帽子の鍔で顔を隠した。

 こんなに美少女なのにどういうわけか褒められ慣れてないらしい。


 ふーん、ピュアで良いじゃん。

 高得点です。


 そんな感想を抱く俺の耳に口を近付けた凛音が囁く。


「……おにぃ、この子可愛い。私色に染め上げてエロエロにしたい」

「お前、本当にそこらの男とおんなじピンク脳だよなぁ……。まぁ分からんこともない俺も大概なんだけどさ」

 

 少し鼻息荒く、下卑た視線を絵美と名乗った美少女に向ける凛音。

 まぁ多分今の俺も視線のことは言えないだろうけど。


 何て俺達のエッチな視線に気付いたのか、絵美がジト目を向けてくる。

 

「何かエッチな目を……しかも妹さんの方から強く……?」


 どうやら俺より凛音の方が酷いらしく、戸惑った様子で零す絵美に……凛音が可憐な笑み(威圧感満載)を浮かべて尋ねる。

 

「ねぇ、貴女のおっぱいのカップ数は?」

「え、Eカッ———って何言わせるんですか!?」

「おおっ!」

「チッ、不合格」

「妹さんは自分から聞いておいて、何でそんな不機嫌なんですか!?」


 俺は露骨にテンションを上げ、裏切られた凛音は忌々しげに絵美の胸を睨み、絵美は羞恥から一転して困惑の表情を浮かべている。


 確かにアニメと違って、現実だとEカップはそこまで大きく見えないって聞く。

 それに彼女は、魔法使いの格好でも露出の少ない服のようだし、凛音が期待するのも無理はない。


 因みに凛音は、AよりのBだ。

 基本お金は俺が管理しているから、最近嬉々としてB用の下着を買っていたことで知った。

 もちろん本人には言っていない。

 だって思春期だし。


 ———と、関係ないことを考えるのはコレくらいにして。


「その格好的に……異能は魔法か何かなのか?」


 俺は凛音にイジメられて半泣き状態の絵美から凛音を引き剥がしながら、ダメ元で訊いてみる。

 すると、服装を整えた絵美は、特に隠す必要はないと言わんばかりに頷く。


「そうですよ。私の異能は【四元素魔法士エレメントマスター】ですから」

「「!?」」


 驚いた。

 まさかそんな高ランクの異能使いだったとは……へぇ。


 基本、異能は【ファイアボール】とか【斬撃】とかの1つの技のみで構成される低ランクの異能と、彼女のような【四元素魔法士】などの職業的側面を持った高ランクの異能に分かれる。

 まぁその中にも更に等級があるのだが……四元素も操れるなら相当高ランクな異能のはずだ。

 

 余談だが、職業的側面を持った異能は強いが……最初は直ぐに十全に異能が使える低ランクの方が強いという弱点もある。

 

 それにしても【四元素魔法士】多分……Aランクくらいかな。

 いや四元素ならSSはいかずともSには届くか。

 

 ただ、それを聞くとちょっと疑問が生じる。

 それほどの高ランク異能を持った彼女が、なぜF級ダンジョンにいるのか、だ。

 自分でD級と言っていたし……F級なんざ時間の無駄にしかならない気がするが。


 そんな俺の考えを見通したのか、はたまた偶然か———絵美が突然頭を下げた。



「お願いします、私の配信に出てくれないでしょうか!?」



 ……なるほど。

 つまり俺達を探してこのダンジョンに来たのか。

 まぁ会えたのは偶然だと思うけど。


 何て思考は程々に、俺は凛音に目を向ける。


「どうよ? 俺は別にどっちでも良いんだけど」

「うーん……お金貰えるなら?」


 少し考える素振りを見せたのちに条件を出す凛音に、すかさず絵美がブンブン首を縦に振った。


「出します! お2人合わせて10万でどうですか?」

「「お任せください、御主人様マイロード」」

「態度急変しすぎじゃないですか!?」


 だって今はお金ないんだもん。

 死活問題なんだもん。

 今更恥など感じてられるかってんだ。

 

 ただ、揶揄うのは程々にして、

 

「俺は赤羽灰音。コッチは赤羽凛音」

「凛音だよー」

「よろしくな、絵美」


 自己紹介と共に絵美に手を差し出す。

 絵美は一瞬差し出された手を見てキョトンとしていたものの、直ぐに嬉しそうに絵美を浮かべて手を握る。



「はいっ、こちらこそよろしくお願いします!」



 こうして、俺達は彼女の配信に出ることになった。






「どうだった、おにぃ? ?」

「あぁ、

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