次回の本放送は一月十二日となります。

 仮面バトラー事業部から、鷲崎わしざきタクトと鶴見つるみこまちは『COMMAコンマ』の地下駐車場へと移動した。ここから、朱未の叔父に関する情報を聞き込み調査するべく、紋黄町もんきちょうの南部にある集合住宅へと向かう。


「気になっていたこと、聞いていい?」

「メガネのブランド?」

「違うわよ。前にね、イーグレットちゃんが『タクトなら怪人が来てもだいじょうぶい』って話をしていたのが、気になっていて」

「へえ。あの子が」


 だいじょうぶい、とは言っていないが、タクトをやけに信用していた。こまちは、タクトが戦闘面で活躍する姿を想像できていない。


「怪人は、人間では太刀打ちできなくて、その、シンボリックエナジーを打ち込むことで、倒すのよね?」

「せやな。シンボリックエナジーを操る力を持っているのが“お嬢様”やね。仮面バトラーシステムは、仮面バトラーに変身することでお嬢様の能力を再現できる」

「その“仮面バトラーシステム”ってのも、気になっていて」

「こまっちゃんは知りたがりやな……」

「仮面バトラー事業部の一員として、仮面バトラーに詳しくなっておかないとね。広報部の鷺ノ宮さぎのみやくんにもさんざんつっこまれたのよ」

「いい写真撮れてたなあ。ウチも撮ってもらえばよかった」

「まだまだ気になることはあるわ。今日は全部質問させてもらう」

「運転しながらでええか?」

「安全運転でね」


 タクトは運転席に座る。隣の助手席に、こまちが乗り込んだ。


「そら、もちろん。万が一事故って、こまっちゃんをケガさせようもんなら、ウチは道場のおっちゃんに投げ飛ばされるで」

「まだタクトのことを覚えていて、たまに聞かれるわよ。あのときのチビは、立派な音楽家になったかってね」

「なっとらんな……」

「気になることのひとつ。タクトは、どうして音楽をやめてしまったのよ?」


 星雲学園大学は、国内有数の芸術大学として知られている。その音楽科を首席で合格した男が、将来を有望視されていないはずがない。国内に限らず、国外からもスカウトの嵐だっただろう。それらを蹴って、タクトはコンマの副社長の座に就いている。


「何それ。コンテスト?」

「半世紀に一度、一ヶ月間開催される『音楽家を集めたバトルロイヤル』やね。青雲大の卒業が決まった時に、ウチに招待状が届いてん。主催は、音楽の女神ミューズ・シエロ」

「……聞いたことがないわ」

「ウチはから、話しとうなかったんやけどなー」


 ムジカ杯の招待状を手にした参加者がフィールドへ降り立つ時、仮面バトラーシステムバージョン3のベルトが配布される。タクトは指揮者コンダクターの指揮棒により、楽器を召喚して戦っていた。


「イーグレットちゃんがタクトを信じているのは、その『ムジカ杯』に参加していたタクトが仮面バトラーへ変身できて、怪人と戦えるから? 怪人と戦える力を持っているのは、仮面バトラーだけよね?」

「仮面バトラーにはこまっちゃんも変身できるやろ。あの『Quoteクオート』が作ったリベロヴァルカンを使えば、リベロになれるわけやし」

「いいや、そうじゃなくて、――って、あれ? タクト、ちょっと車止めて!」

「のわっ!?」


 こまちがハンドルを握るタクトの腕を掴む。前方に、見覚えのある青年を見つけたからだ。


勝風しょうぶくん、どうしてこんなところに?」


 助手席から降りて、その青年に話しかけた。望月もちづき勝利しょうりの兄、勝風である。勝風は、仮面バトラー事業部に置き去りにされたフォワードベルトを回収するべく、上の階に上がろうとしていた。


 基地ベースは地下駐車場の隠し扉の先にあるが、こまちは正確な場所を知らない。勝風が地下駐車場に突然現れたように見えたのだろう。


「クオートが、怪人に襲われて!」

「ほなら、クオートに向かうか。勝風、後ろに乗って」

「その前に、勝利のフォワードベルトを取ってこないと!」

「ああ……そうやったな。面接前に外したんやった」

「勝利くんとは連絡がついているのね?」

「ああ。クオートで合流する!」



劇場版!

仮面バトラーフォワード『ハイスクールオブムジカ』!


絶賛公開中!

https://kakuyomu.jp/works/16818093077241425520/episodes/16818093089380315722

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【連載版】仮面バトラーフォワード 秋乃晃 @EM_Akino

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