第17話 Bパート
「勝利! 今どこにいる!?」
『
「その声は、――勝利はどうした?」
『そっとしといてやれ』
ゴートは勝利を気遣っている。紋黄高校の校門に最も近い場所にあるベンチに座らせて、自分の意志でまた歩き出すのを待つ構えだ。だが、勝風としては、悠長なことを言っていられない。無理矢理にでも勝利を立ち上がらせ、
「フォワードベルトは反応していないのか?」
『うむ?』
「フォワードベルトはどうした!」
『ベルトは、持ち歩いておらん』
「なんだって!?」
『巻いとったとしても、今の勝利に戦いはできぬ』
「しかし!」
「兄貴」
勝利が携帯電話を握り、自身の耳元に近づけて、勝風に呼びかける。その声はかすれていた。
「兄貴は、人間が怪人に変わっているって、知ってた?」
勝利には話していなかった。リベロ部隊に持ち帰り、
けれども。
仮面バトラーフォワードとして戦う勝利には、誰も教えていない。
「そう、なのか」
勝風は、知らなかったことにした。ゴートの口ぶりからして、勝利が深く悲しんでいるのはわかる。仮面バトラーフォワードとして、お嬢様をお守りするという名目で、怪人を倒していた。
「最初に倒した怪人が、七瀬かもしれない。考えれば考えるほど、七瀬の特徴とぴったりなんだ。電話をかけても、つながらない」
「七瀬って、あの、マネージャーをやっていた子か」
勝利の兄として、勝風はサッカー部の試合を見に行っていた。マネージャーとも面識がある。
「そう……」
顔見知りを倒してしまったかもしれない。勝風は勝利の性格を、兄として理解しているつもりだ。携帯電話を耳にあてながら、青ざめているだろう。
それでも、ここで勝利に動いてもらわなければ、クオートは救えない。仮面バトラーリベロと仮面バトラーフォワードで、共闘する。勝利が母校の紋黄高校にいるのなら、紋黄高校に寄るしかない。居場所が判明していてよかった。
「七瀬とは限らないだろう! 勝利!」
勝風のリベロヴァルカンは仮面バトラーシステムバージョン4に換装したとはいえ、通常のリベロヴァルカンを使用して変身する仮面バトラーリベロが六人で戦っても苦戦している相手に立ち向かわなければならない。勝風が単騎でクオートに戻ったところで、火に油だ。勝利は絶対に説得する。こうして会話しているあいだも、
「兄貴は、知らないあいだに知っている人を倒してしまっていたらどうするの?」
「オレはアポストロフィーを潰すだけだ! 相手が誰であろうと、怪人はすべからく滅ぼす!」
「さっき、面接で来た
ややこしくなってきた。勝風は、まだ見ぬ『朱未くん』にいらだつ。勝利に余計なことを吹き込んだばかりに、思うようにいかない。
「ゴートさん!」
『なんじゃ、勝風』
「勝利のフォワードベルトは、今どこにある?」
『勝利の机の中じゃが、勝風が持っていても変身できんぞ』
わかっている。仮面バトラーリベロは、リベロヴァルカンさえあれば変身できるが、仮面バトラーフォワードのフォワードベルトは悪用されないようにイニシャライズされているため、勝利にしか使えない。
「ボクは、怪人を元に戻せるのなら戻したいよ! フォワードとして戦っていたら、怪人は爆散しちゃうから、戻せなくなるじゃないか!」
「今! クオートに、怪人が攻め入っている! クオートという拠点が破壊されたら、その『怪人を元に戻す』研究も難しくなるぞ!」
『なんじゃと!?』
「クオートに!?」
勝利とゴートはようやく事の重大さに気がついた。倒してしまった怪人に関して、ああだこうだと思い返している場合ではない。変身する瞬間を見てもいないので、七瀬であると確定はしないのだ。
「ベルトおおおお!」
いつぞやの仮面バトラーリベロの逆である。あのときは、リベロヴァルカンを勝風から取り上げていて、勝風が変身できなかった。今回は勝利がベルトを持ち歩いておらず、変身して駆けつけることができない。
「ベルトはオレが回収してから向かう! 勝利は、紋黄高校から直行してくれ!」
「兄貴、ありがとう!」
「次は持ち歩けよ!」
これには理由が、と勝利は言い訳しようとしたが、電話が切れた。勝利はゴートを右肩に乗せて、
*
ここは、星雲学園大学高等部――
音楽の女神・シエロに護られし学び舎!
「今日も音楽に満ちた一日が始まるぅ〜♪」
劇場版!
『仮面バトラーフォワード』
「私が、……高校生?」
「おはよう! イーグレット!」
「どうしたのよその格好」
「?」
『ハイスクールオブムジカ』!
「今日はこのクラスに、転校生が来ました! みんな拍手ー!」
「どうもー! 転校生の、知川朱未でっす☆」
この夏、音楽が世界を救う!
「どうにかして抜け出さないと……」
来場者特典は『星雲学園大学高等部』の学生証!
(全3種。柄はお選びいただけません)
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