エピローグ

幻想学園クラフト部のひととき

 あの異世界の穴事件から数日がたった。

 あの事件は明らかに僕が原因だったので、正直重い処罰を覚悟していた。最悪学園退学とか、入ったばかりのクラフト部退部とか。

 でも、結果として事件解決の功績と、僕も大きな貢献をしたと言うことを先輩方が学園に説得してくれたらしく、軽い処罰のみで済ませてくれたようだった。

 1週間のクラフト部活動停止と、危険ランクの高いものに関しては、クラフト部単体から学園と共同管理になるというのみ。

 部に迷惑をかけたにも関わらず、先輩たちは快く僕の入部を歓迎してくれたし、なぜか敵対組織のはずの根方先輩すらも祝いをくれた。

 名前入りの花を届けてくれる辺りが、根方先輩らしいと言えばらしい。

 あの事件の日の最後に、根方先輩は僕に向かって、

「これで工桜も正式部員か、次は正式に敵として挑戦するぞ。覚悟しておくんだな!」

 と祝っているような、捨て台詞のようなものをはいて去って行った。面白い人で嫌いになれないなと思った。


 さて、そんな謹慎期間もあけ、僕は今日も部活動を満喫している……かと思えば、そう単純でもなかったりする。

「工桜くん、こっちのパーツ作成お願い」

 なんて、七樹先輩のドールハウス作成を手伝ったり、

「創也くん、事件発生したから解決しに行くよー、道具持って出発!」

 とか、忙しい日々を過ごしていたりする。

 ハヤテ先輩からの呼び名が、名字から名前になったのも変化と言えば変化。


 もちろんクラフトができていないわけじゃない。

 このためにこの学園にきて、過酷な入部試験と課題を突破したんだ。クラフトをやらないわけがない。

 可能な限りの贈り物マテリアルを使って、日々、これまでのクラフト人生でやったことも無いような新しいクラフトをつくっている。

 考えているだけでも楽しく、作業している間はもっと楽しい。

 ときに先輩たちのレベルの高さに打ちのめされながらも、いつか見返してやるぞというモチベーションは高まるばかりだ。

「こんなのつくったんですけど、どうですかね?」

 僕は最新作を先輩たちに見せる。

 そこにはガラスの球体に入った人と小屋、そして森と山、最後のそこにいるドラゴンの模型が閉じ込められている。

 俗に言うスノードームというやつだ。

 ただし違う点がある。

「おお、これ雪だけじゃ無くて、風も雨も降るのか、天候の変化すごいね。おもしろ」

 ハヤテ先輩がのぞき込む。

「昼と夜も変わりますよ。贈り物マテリアルやばいですね。何でもできすぎて」

「ていうか、このドラゴンたまに火吹いてるんだけど、これほんとに炎出してない?」

「もちろん、そこの再現度にはこだわりました。実物見ましたし」

「それ、そのうちドームに穴あかない?」

「……あ」

 七樹先輩の突っ込みに、失敗を悟る。

 ハヤテ先輩が笑っている。

「まだまだだね、新入部員君。もっと素材の特性を学ばないと」

「その通りですね。まだまだです。でも、面白いでしょ」

「うん、面白い。これも創也のクラフトだね」

「もっともっとすごいものつくって見せますよ」

「ああ、楽しみだ」


 そんな楽しくも心躍る日々。

 求めていた環境に僕はいる。

 どんな贈り物マテリアルとであうだろう。

 どんなアイデアを思いつくだろう。

 なんだってできるし、つくってやる。


 幻想学園クラフト部の正式部員、工桜創也のクラフトははじまったばかりだから。

 さあ、次はどんなクラフトをつくろうか。

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幻想学園クラフト部へようこそ! 季都英司 @kitoeiji

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