【あとがき】編集担当から管理人様へ
管理人様が失踪してしまうほどの大きな事態となってしましまい、皆様に多大なるご心配とご迷惑をお掛けしてしまいましたこと、本誌における編集担当として心よりお詫び申し上げます。
皆様にはすでにお知らせしております通り、現在我々編集部は管理人様との連絡手段を完全に断たれてしまい、連絡が取れない状態にあります。しかし、我々とともに最後まで怪異の真相を突き止めるべく奔走してくださった管理人様なら、この本をどこかでお読みになっていることと思います。そこで我々は、この場を借りて管理人様へメッセージを送りたく思います。このような形をとることでしか管理人様にメッセージを届けられない自分たちに対して、非常に強い悔しさを感じずにはいられませんが、それでも我々の言葉が管理人様の元に届くことを願い、ここに書かせていただきます。
まず、私は管理人様と一緒にここまで仕事をしてきた編集担当者として、謝らなければならないことがあります。管理人様が怪異の原因であると推測され、最後まで公開されようとなさっていたXXという名字に関してなのですが、実は私自身がXXという名字なのです。管理人様との会議などの際は、ずっと偽名を使っておりました。個人情報保護の観点からXXにあたる部分は知らないと以前書きましたが、本当は知っておりました。編集部の都合だと言ってXXを伏字にし続けてきたのは、すべて私の都合によるものです。本当に申し訳ございません。
ただ、私は管理人様のおかげでずっと疑問に思っていたことに対する答えを手にすることができました。私も幼い頃から、自分の周りで妙な怪奇現象が起こっていることを感じていました。しかし誰に相談してもその原因が全く分からず、困り果てておりました。もう死ぬまでこの疑問に対する答えが得られないのではないかと考えていたある日の事、管理人様の作られたオカルトサイトを発見しました。そこにはXXらの周りで奇怪な現象が起こっていることが取り上げられており、私はすぐにその記事を読み上げ、即座に管理人様にメッセージを送り、コンタクトをとることといたしました。その後一緒に調査に乗り出すことを決めたのも、書籍化の提案をさせていただいたのも、全てはXXに関する真実を突き止めるためでした。そして結果的に私の願いは叶い、おかげさまで私はずっと知りたかった真実にたどり着くことができました。実は私が最も恐れていたのは、周りの人たちが呪いによる怪奇に巻き込まれてしまっていった後、最後には私自身が呪いで死んでしまうのではないかという事でした。しかし管理人様の突き止めた話によれば、私は完全に呪いの対象外であるとのこと。私はこれまで生きていてこれほどうれしい知らせを聞いたことはなかったかもしれません。おかげで今日からぐっすりと眠りにつくことができそうです。本当にありがとうございます。
しかし、その代わりに大変な事が起こってしまいました。本誌をお読みになってくださっている皆様にはお分かりの事と思いますが、管理人様は完全に狂ってしまわれました。その兆候は、私たちが一緒に調査を行う段階から徐々に見られ、最後には目も当てられないようなひどい状態になってしまわれました。それは先日発見された管理人様のSNSからも明らかです。詳しい理由は分かりませんが、もしかしたらその原因は、XXである私があなたのそばにい続けてしまったためなのかもしれません。ただ、それに関しては証明のしようがありません。別に私が関わらなかったとしても、管理人様は狂ってしまわれたかもしれません。
しかし実際の所、そんなものは些細な問題であると思っています。管理人様はすべての真実を明らかにされることのみを願っておられましたから、こうして全ての真実が明らかになったというだけで、心の中では喜んでおられることと思います。私はあなたに助けていただいたこの命と名前を無駄にすることなく、これからも自分の人生を精いっぱい生きたいと思います。
なお、これは完全に余談なのですが、私はつい先日父親になりました。私にそっくりな元気な元気な男の子です。私は私と同じ名字を継いでくれる子の誕生を非常に喜ばしく思い、先祖代々守ってきた大切なものをこれからも後の世代に託していこうと思っています。私がこのような幸せを得ることができたのも、すべて管理人様のおかげです。重ねてお礼申し上げます。
管理人様は最後の最後までXXを世に公開するべく動き続けられてこられましたが、いよいよあの方自身が呪いによって精神的に不安定な状態となり、それを果たすことができなくなってしまったのだと思われます。読者の皆様はどう思われるか分かりませんが、私としましてはXXが公開されることなく終わった事を、心から安堵しております。
それでは、またどこかでお会いできる日を楽しみにしております。
『XXという名字の人にお気を付けください』完
リームアロー編集部 本書編集担当 XX良太
XXという名字の人にお気を付けください 大舟 @Daisen0926
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます