解き放たれしチワワ
バンブー
消息不明チワワ
私が量販店で働いていた頃の話。
場所は東京の地名を言えば一発で何処かわかる場所。
私は仕事中、心を癒すために売り場のLED電球をジーッと見て過ごしていた。
平日だったのでお客様はおらず、いわゆるお店の人しかいない状況だった。
日々のブラック労働に色とりどりのLEDで浄化していた時、ふと人の気配を感じへばりついていたLEDの売り場から離れた私の前に1人の女性が通った。
「いらっしゃいませー」
私は女性に挨拶すると、色白で細身の険しい顔した人だった。そしてその胸元には、
「……チワワだ」
そう、私も思わず呟いてしまったが白黒のチワワを抱えていたのだ。
因みに店内動物の連れ込みはお断りしていたのだが、ぼーっとしていた私は注意する思考にまだ至っていなかった。
そう、まだだ。
女は私の前を通り過ぎた後、胸元に抱えたチワワを、
パッ
っと胸の高さから解き放ったのだ。
チワワはなれているようにシュッた! っと4本足で綺麗に着地し、リードもつけていないまま電球売り場の奥へと消えていった。
「いや、それはダメだろ!」
我にかえった私は奥へ向かったチワワと女をすぐ追いかける。
「すみません! 店内で動物の……」
すぐに追いかけたはずなのに、女とチワワがいない。
「え? え?」
東京某所にあるお店だが敷地は広くなく、電球売り場なんてお店の端っこ、逃げたり隠れたりする場所はなく、他の売り場も少し見渡せば誰が何処にいるのか一発でわかる。
「ウソ……消えた?」
ほんの数秒で女とチワワが消えたのだ。
消滅したと言っても過言ではない。
「どうかしました?」
当時同じ職場にいたスタッフが、私に声をかけた。見渡してもやはり女の影も見えず、混乱しながら彼に伝える。
「い、今! チワワを抱えた女の人がいて! その女がチワワを解き放って! それで!」
「チワワを放ったんですか!?」
いや、そうなんだけどそうじゃないんだ。
なんとか、チワワと女が消えた事を話しても、どのスタッフも見ていないと言うだけだった。
皆さん、これって幽霊なんですかね?
それとも電球による幻覚?
私はチワワと散歩していた時に死んだ幽霊だったんじゃないかなと思っています。
飼い主の皆さんはちゃんとワンちゃんにリードをつけて散歩してください。
死んで幽霊になっても、散歩する事になるかもしれませんよ。
解き放たれしチワワ バンブー @bamboo
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