第5話シロエ


 ユーフォニアは公開処刑となることが決まった。



 公開処刑の前日、リッカルド王子が面会にやって来た。


「これが最後だ、何か言い残すことがあるなら聞いてやる」


 ユーフォニアが今最も心を痛めているのは王都の屋敷に残してきた猫のこと。


「シロエはどうしているでしょうか?」


「なんだそれは?」


「白い猫です。わたくしが4歳のころから飼い始めた猫で10歳になります。夏期休暇が終わった後、王都の屋敷に戻るときにいっしょに連れてきたのです。人懐っこい猫だから誰かに引き取ってもらえたらと。野良になったらきっと生きていけないと思うのです」


「はっ! ひとなつっこいだって?」


 王子は膝を叩いて笑い転げた。


「そいつは逃げ回って、さんざん手をやかせてくれたぞ! 最後は火魔法を放って丸焼きにしてやったがな。あはははは!」


「えっ…!?」


「貴様に関わったモノはネズミ一匹生きてはおらぬわ。安心するがよい」


「そんな…」


「くっくっくっ!」


 王子は肩を揺らしながら去っていった。


「ああっ…、シロエ」

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