第7話クェイル襲来


 クェイル、その言葉を耳にしたとたん広場が騒然となった。


 唐突に日の光が遮られ、巨大な影が王都を覆った。


「クェイルだ!」


 民衆たちは我先にと広場から逃げ出した。


 リッカルド王子はあわてて指示を出した。


「王国魔術師は即時攻撃をせよ! クェイルを打ち滅ぼすのだ!」


 王都の各所に配されていた王国魔術師から一斉に攻撃魔法が放たれた。


 強力な魔術の閃光は余すところなくクェイルを直撃した。


 しかし爆発は起こらず、クェイルに放った魔術は反射されて魔術師のところに返ってきた。


 魔術師たちは、己が放った魔術によって吹き飛んだ。


 その様子を見ていたユーフォニアは、兄が開発した反射の魔術だと気がついた。


 断頭台の上から見上げると、クェイルの上に人影らしきものが見えた。


「なにをぼさっと突っ立っているんだ、ユーフォニア」


「お兄様? ロビーお兄様!」


 クェイルの上に立ってこちらを見下ろしていたのは兄のロビー・ファキネッティだった。


「君ならそんな拘束具を破壊するなど造作もないだろう?」


「ああ、これ…」


 ユーフォニアが少し力を加えると、両腕の拘束具は砂のように崩れていった。


「なっ、そんなばかな!」


 リッカルド王子たちは驚愕した。


 魔力を無効化する拘束具は王家の家宝の一つだ。


 それがいともたやすく破壊されるなどあり得るはずがなかった。

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