第3話婚約破棄


 冬期休暇の前日、王立学園の年末パーティーの会場で。


 アモルフィス王国の第一王子リッカルドは、ファキネッティ侯爵令嬢に婚約破棄を告げた。


「ユーフォニア・ファキネッティ、貴様との婚約を破棄する」


 ユーフォニアが何か言おうとすると、王子の取り巻きたちに剣を喉に突き付けられた。


「とぼけても無駄だ、アンベリアンへの度重なる暴言、暴行を俺は決して許しはしない」


 王子の隣にはストロベリーブロンドの男爵令嬢アンベリアンが寄り添うように立っていた。


「証拠はない。だが、証拠など不要だ。アンベリアンが証言している、それが全てだ。そもそも貴様は権力を笠に着て証拠を隠滅していたのだろう? 小賢しいやつめ」


 ガシャン。両腕に魔法を無効にする拘束具がはめられた。


「こいつを地下牢に連行しろ」


 抵抗する間もなく、ユーフォニアはパーティー会場から連れ出された。



 物事が望まぬ方向へどんどん進んでいく、まるで悪夢を見ているように。


 投獄から一族郎党処刑まで、とんとん拍子で決まっていった。


 優秀だった兄もかわいかった妹も、両親も叔父も叔母も従妹たち親戚全て処刑されるのだ。


 ありもしないユーフォニアの罪のせいで。


 人は理由もなく処分されるのだと痛感した。


 人の命など紙切れ一枚よりも薄く軽いのだ。


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