第10話燃ゆる王都


 王都は瓦礫になり、人の姿も見えなくなった。


「何人かは逃げたようだな」


「そのようですね」


「ここにはもう用はない。帰るか」


「はい、お兄様」


 クェイルは王都を離れ領地へと進路を取った。


 王都の外れの小高い丘を通り過ぎたところで、ユーフォニアは振り返った。


 振り返った瞬間、王都全体が青白い光に包まれた。


 その光は、爆発的に燃え広がった摂氏一万度を超える炎だった。


 青白い炎は全てを焼き尽くす殲滅の業火。

 

「君が大人しくしていた理由はこれか」


「はい。ひとりたりとも逃しません」


「ふっ、たしかに、誰一人助からんだろうな。隠れて生き延びていたとしても、この炎に焼かれるだろう」



 シロエが殺されたと聞かされたとき、ユーフォニアは心を決めた。


 処刑台の上で、全ての盤をひっくり返すと。


『王都をチリひとつ残さず燃やし尽くす』と。


そのために王都中の地下に煮えたぎる魔力を潜ませていた。


 あとは起爆のスイッチを押すだけでよかった。


 最愛のシロエへの攻撃をユーフォニアが許すはずがない。


 そのシロエは無事に生き延び、今はユーフォニアの腕の中にいる。



 ロビーは公開処刑場でリッカルド王子が言っていた言葉を思い出した。


「国家反逆罪というのもあながち嘘ではないな」


「あら、先に牙をむいたのはあちらでしてよ。もちろん殺られる覚悟もおありだったのでしょう」


「ははは、君を怒らせると恐いってことを肝に銘じておくよ」


 例え全人類を敵に回しても妹はシロエを選ぶだろう。そういう妹なのだ。


 リッカルド王子も取り巻きたちも妹の扱いを全く心得ていなかった。同情の余地は全くないな。



 王都が燃えている。


 青白い炎に包まれて。


 ラベンダーの青、ユーフォニアの魔力の色。


「きれいだな」


 と、ロビーはつぶやいた。


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