跋



 何ヶ月かゞ過ぎた。

 爺さんはあれから二度とくわうさんの店に現れなかつたと云ふ。

 しかるに、黃さんはそのの上をしきりに心配してゐたらしい。



 それから――

 これ蛇足だそくであるが、つい二月ふたつき程前、何でもの學生が黃さんの娘に附文つけぶみをしたらしい。

 隨分ずいぶん思ひ切つた事をしたものである。


 所が、戀文こひぶみは直ぐに親の目にまつてしまつたのだと云ふ。黃さんが激昂げきかうした事は云ふ迄もない。

 まあ、庖丁はうちやう沙汰ざたこそ無かつたものゝ、の時、フロツクの爺さんに向けられた寛容くわんよう慈悲じひも、學生には一切及ばなかつたやうである。



 さて、其后そのあと、二人の戀路ローマンス何如いかなる方面へと伸暢しんちやうし、何如なる具合ぐあひ展延てんえんする次第と相成あひなつたか?





 何如どうです。讀者どくしや諸賢しよけんには氣になりますか?

 氣になるでせう。


 しかるに殘念ざんねんながら、それは、筆者の關心くわんしんおもむく所ではないのであります。




                         <了>







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廣東酒家 すらかき飄乎 @Surakaki_Hyoko

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