第3話 私の決意。

 部屋にユナちゃんと移動するのに、やっぱり私のTシャツを掴みキョロキョロと不安な表情をしていた。


「こわい?」

「別に……こわくない……」


 うわ。めっちゃ強がってる表情と、強がってっている言い方が可愛い。思わず顔がニヤけてしまうのを我慢する。


「ねぇ……ヒナお姉ちゃんの……お部屋まだ……?」

「2階の奥の部屋だよ」

「ヒナお姉ちゃんの、お家大きすぎぃ……」


 不安そうな表情で言ってきたので、私までユナちゃんが実は嫌だったのかもと不安になってきた。うちに泊まるのが嫌になっていたなら……その時は……一緒に考えてあげようかな。

 

「えっと……不安そうな感じだけど、泊まるのって嫌になってきちゃった?」

「えっ!?ち、違うっ。嫌じゃない……広いんだなぁ……って思って……その……迷子になっちゃうよ」

「迷子にはならないでしょ。2階にはトイレもあるし」

「そうなんだ?わたしが行く所はトイレくらいだし……それなら安心だぁ」


 あれ?トイレが心配だっただけ?ニコニコしながら付いてきていた。トイレは重要だよね……トイレに行くまでに迷子になったら最悪だし……漏れちゃうよ!トイレは部屋の近くだし大丈夫でしょ!


「私の部屋は、ここだよー」

「わぁー可愛い部屋……ベッドも大きいー♪」


 部屋に入り嬉しそうに部屋を歩き回り一通り見終わると、嬉しそうにしていたユナちゃんを入口付近でボーッと見ていた私の元にユナちゃんが駆け寄ってきた。


「あ、あの……今日は……ここで寝ていいの?」

「あぁ……うん。ごめんね。一緒の部屋で、一緒のベッドになっちゃうけど……良いかな?」

「ほんとっ!?うん。一緒がいい」

「そっか!良かった!」

「えへへ……なんだか夢見たい!こんな可愛いお部屋で寝れるんだぁー」

「喜んでくれて良かったッ」


 一人では広すぎる部屋で、いつもは寂しいと思って過ごしていた部屋が、今は何だかユナちゃんが居るだけで華やかになり楽しい気分にさせてくれた。


「ベッドに座ろうか?」

「うん」


 私がベッドに座ると隣に、ちょこんと座った。


「ユナちゃんは、帰らなくても親は心配しないの?」

「しないよ。だって帰ってこないもん」

「帰ってこないって?」

「えっと……お父さんが浮気して離婚したんだー」

「そ、そうなんだ……」

「それで、わたしってお父さんの子供だから……見たくないとか……引き取るんじゃなかったとか言われて……ママが帰ってこなくなっちゃった……」


 え?えっと……こんな重い話をしてくれてるけど……なんて答えれば良いのか分からないよ……。返事やアドバイスとかを考えるけど思いつかず、やっぱり今日だけじゃなくてしばらく……一緒に居た方が安全だし可愛い妹が出来たみたいで一緒にいたい。


「それじゃ、しばらくうちに泊まっていけば?」

「え?良いの?ほんとっ!?やったっ!」


 可哀想で思わず言っちゃったけど……良いよね?心配だもんっ。一人にしちゃダメな気がする!私が面倒を見る!


「今週は、テスト期間だからお昼前には帰れるから……一人で留守番出来る?」

「……子供じゃないんだから……出来るよ!ずっと一人だったんだし……さぁ……」


 わぁ……強がってるのがバレバレだよ……目を潤ませちゃってるじゃん……


「早く返ってくるから頑張ってね?」

「う、うん……ヒナお姉ちゃん……何時に帰ってくるの……?」


 やっぱり強がってるんだよね……うぅーん……明日は……学校を休んじゃおうかなぁ……テストよりユナちゃんの方が大切だし……私、決めた!明日は休む!家にあるタブレットで学校に欠席って送れば良いだけだし……何よりユナちゃんに頼られてる感じが嬉しい。


「直ぐに帰ってくるって!」

「う、うん……わかった……」

「それより、おやつ食べる?」

「いらないー」

「そんなに落ち込まないでよー」


 俯いたままのユナちゃんの黒色のサラサラな髪の毛の隙間から、わずかに心配な表情をしているのが見えた。


「落ち込んでないよ……いつも通りだもん」

「明日は……学校を休んじゃおうかなぁ……」

「……え!?」


 目をキラキラさせて振り向いた。

 

「そしたら元気出たりする?」

「……う、うん。元気出る!」


 戸惑った表情をして気を使っている感じで返事をした。


「そっか!じゃあ……休んじゃおう!」

「ほんとっ!?良いの?えっと……わたしの為?」

「ううん。疲れちゃったし……私が、ユナちゃんと一緒に居たいなーって思っちゃって!」

「わぁーいっ!でも……大丈夫なのかなぁ?」


 ピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいたユナちゃんが暗い表情をして聞いてきた。もぉー笑顔で可愛かったのに……心配しすぎだよー


「大丈夫だよー心配しすぎだよッ。おいでー」

「なにー?」


 ベッドに座っている私に、首を可愛く傾げて素直に近づいてきたユナちゃんをガバッと抱きしめた。わー柔らかいユナちゃんのお腹気持ちいい……それにいい匂い。


「きゃぁ……はぅ……ヒナお姉ちゃん……!?どうしたの……?」

「安心させようと思って……抱きついてみたの」

「……そう……なんだ……う、うん……安心する……かも……ね……」


 ユナちゃんも恐る恐る背中に手を回してきて、ゆっくりと恐る恐ると抱きしめてきた。


「えっと……急には無理かもしれないけど……私に甘えても良いんだよ?」

「こ、子供じゃないし……大丈夫……甘えない……」


 ユナちゃんは、甘えないと言うけど……抱きしめたまま話をしていた。

 

「そっかー。でも甘えたい時は甘えてね」

「……ヒナお姉ちゃんが、どうしてもって言うなら……そうする……」


 ユナちゃんが……ぎゅう♡っと抱きしめてくれた。

 

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