第11話 気不味い雰囲気で過ごす。

 ベッドで、横になっているとユナちゃんが慌てて部屋に入ってきた。


「置いて帰るなんて……お姉ちゃんヒドイよ!」

「……楽しく話をしてたし……夕飯を作らないとだったからね……邪魔しちゃ悪いと思って……」

「声を掛けてくれたら良かったのにー」

「友達の家に行くんじゃないの?」


 つい……意地悪な事を言ってしまった。


「え?なんで?行かないよ?」

「だって、友達に誘われていたでしょ?うちに来ても良いよって……」

「……お姉ちゃん……わたしが邪魔になったの?わたしが出ていっても良いの?」

「……友達と楽しそうに話をしてたのを見ちゃったし……私と居るより良いんじゃないのかな……」

「……そんな事ないのに……お姉ちゃん嫌いッ」

「……そっか……嫌われちゃったね……」


 ううぅ……何してるんだろ……私。思いっきりヤキモチだよね……そりゃ嫌われちゃうよね……はぁ。こんな感情は初めてだし……どうして良いのか分からないよ。この好きだっていう気持ちを伝える訳にもいかないし……


「あ、ご飯早く食べないと……」

「いらないっ」

「そっか……一応、持ってきておくね」


 絶対に後で、お腹が空いちゃうよね……リビングから夕食を運んできてテーブルに置いた。


「お腹が空いたら食べてね。私は疲れたから寝てるね」

「……だ、大丈夫?あの……ごめんね……?怒っちゃった?嫌いじゃないよ!?カッとして言っちゃったの……」

「うん……大丈夫だよ……」


 ユナちゃんに背を向けて寝ていると、ユナちゃんもベッドに横になってきて、私の背中に抱き着いてきた。


 そんな事をしなくても良いのに……嬉しいけど今は、そんな気分じゃないし喜べないかな……


 しばらく抱きしめられていると……ぐすんっ……ぐすんっ……と泣いている声と、ぎゅぅ♡と抱きしめられた。


 あれ?な、なんでユナちゃんが泣いてるの?え?なんで?なんで?


「ユナちゃん?ど、どうしたの?なんで泣いてるの?」

「……ぐすんっ……お姉ちゃんに嫌われちゃったと思って……謝っても許してもらえないかもって……」

「違うの……えっと……あ、あのね……私、おかしいの……」


 もう……正直に話しちゃってラクになろう……このままじゃ気不味いだけだし……今なら私の事を嫌いになっても、行き場所もあるだろうし……


「うん?おかしくないよ……元気が無いと思うけど……」

「おかしいんだよ。あのね……私、ユナちゃんの事が好きなの……」

「ほ、ほんとー?」


 涙を流して暗い表情をしていたユナちゃんが、目をキラキラさせて向かい合わせで横になっていた私に抱き着いてきた。


「ユナちゃんが思ってる好きとは違うって……」

「ん?好きに種類があるの?」


 首を可愛く傾げて聞いてきた。もぉ……分かるでしょ……説明をするのが恥ずかしいんだけど……説明をさせる気なの……?興味深そうに見つめられていたので説明をした。


「あのね……家族の好き、友達の好きがあるでしょ?ちょっと違うでしょ?」

「ん……うん……違うかなぁ……ちょっと分かった!えっと……その……わたしには……家族としての好きなんだ!?」

「違うかなぁ……」

「え?……違うんだぁ……そっかぁ……」


 残念というか……ショックを受けてる表情で目を逸らした。


「家族とも友達とも違う好き……なんだよね……」

「え?他にもあるの……?」

「えっと…………恋人同士の好き……があるでしょ……」

「あぁー!うん。ある!……え?でも……女の子同士だよ?」

「うん。だから、おかしいって言ったんだよ」

「…………えっと……わたしの事は、そういう好きなんだ……?」

「うん……ごめんね。だからさっきはヤキモチを妬いてたみたい……」


 ユナちゃんが、ニコッと笑って抱きしめてきた。え?だから……そういう事は……もう止めて……


「ユノちゃん……ダメだよ……あとで私がツラくなっちゃう……」

「なんで?嬉しくないの……?」

「嬉しいから、後で辛くなるよ……」

「だったら……ぎゅぅ♡ってしよ」

「だから……恋人同士がする事だし……付き合えないんだから、もうベタベタするのはやめよ……」

「あのね……わたしも……お姉ちゃんが好き……なんだぁ……その、家族や友達と違う……好き……かも……。それでも……ダメ……かなぁ……?」


 …………え?ウソだよね……私に、気を使ってくれてるだけだよね?嬉しいけど……後でツラくなるって言ってるのに……止めてほしいなぁ……


「嬉しいけど……気を使わないで良いよ……ユナちゃんは男子と付き合いなよ。普通に付き合った方が良いよ……」

「違うし……お姉ちゃんの事が、好きなの……ば、ばかぁ……」

「じゃ、じゃあ……キスとかしちゃうよ……」

「え?ほ、ホントに?」


 目を丸くさせて頬を赤くした。


「嫌でしょ……?普通に接してくれたら一緒に居て良いから……普通に、友達として過ごそう?」

「……イヤッ。き、キスする……お姉ちゃんとキスしたい……」


 えっと……本気なの?えっと……表情は本気だよね……


「ユナちゃんは、私と付き合うって事かな……?」

「良いの?お姉ちゃんの彼女になれちゃうの!?」


 え?すごい積極的?あれ?もしかして……


「あの……さっきのオシャレで可愛い服って……友達に見せる為だよね?」

「え?違うよ……お姉ちゃんと、お揃いにしようと思って……選んだんだよ?同じワンピース♪それに友達が、公園に居るって知らないよっ」


 ん……もうダメ……


「キス……しちゃおっか……」

「ん……うん……」


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