駄菓子工場の噂

暗黒神ゼブラ

駄菓子工場の噂


「ねえ直弥(なおや)ここの駄菓子の噂知ってる?」

「その噂ってなんだよ」

「えー! 直弥本当に知らないの!? ニュースにもなってたのに」

「ごめん彩(あや)……俺あんまりニュースとか見ないんだよ」

「そう……だったらこの彩様が教えてあげる!!」

「ははー無知な私にお教えください彩様……ってなにやらすんだよ」

「……いやぁ直弥だってノリノリじゃん……でねその噂ってのがこの駄菓子にはネズミが使われてるらしいのよ……しかもマンホールの中とかにいるネズミ」

「……うわぁ……それ本当かよ」

「だからさ私たちで今日の夜にでもその工場を見に行こうと思ってるのよ!! どう、直弥も一緒に行かない?」

「……まっまあ彩一人だったら危ないしな…………やった彩と二人きりじゃん(小声)」

「じゃあさっそく……レッツゴー!!」

そうして俺と彩はその駄菓子の工場に侵入することにした。

絶対に危険だけど……困ったことに彩はこうと決めたらやめないような性格だから止めようがない……まあだから俺は何年も彩を護れるように身体を鍛えた。

一応世界大会は優勝したんだぞ。

テコンドーに空手に柔道にカポエイラなどなど

二時間後

「直弥ここだよ!! もう楽しみで仕方ないよ!! ワクワク」

「楽しみなのは分かったけど口でワクワクって言うなよな、かわいいから」

「……直弥私のことかわいいって言ったの今?」

「そっそんなわけないだろ……俺がかわいいって言ったのはあの……その……えっと……そうだワクワクを口に出して言ったことにだ!!」

「ふ〜ん、そうなんだ。ふっふふふ、な〜に嘘ついてるのよ直弥、私には分かるわよ……あ〜笑った笑った。何顔真っ赤にしながら言われても分かるし直弥いつも私のこと見過ぎだから気づくわよ」

「なっなななな何を言ってるのやら……ほらとっとと入るぞ!!」

「はいはい分かってるわよもう」

俺たちはこの時、とある紙を見過ごしてしまったのだが工場の中でその紙を見ておけばよかったと思うことなる出来事があるのだった。

工場内にて

「わーすごいすごい、ねえ見てよ直弥!! あの機械すごいね」

「彩今すごいしか言ってないぞ……なあ彩あれなんだ」

「どれ……見えないんだけど」

「だからあそこのロボットだよ……なんかこっちに来てないか? それになにか持って……」

「あれ……キャァァァなっ直弥早く逃げるよ!!」

「どっどうした!? まさかあのロボットが……」

「そうよ!! あのロボットが持ってるのここの従業員の上半身だよ!!」

「なんでそう思ったんだよ彩!!」

「だって上半身の服にこの駄菓子会社の名前が書いてあったし……あの人テレビでインタビュー受けてた人だから見たことあるの!」

なぜこの工場に人が全く居なかったのかが分かった気がする。

俺と彩が走っている最中に何回もここの従業員の死体を見かけた。

俺と彩は隠れられる場所を見つけたのでそこに隠れることにした。

「ねっねえ直弥もう帰ろう……でもこのこと伝えた方が……そうしないとロボットを止めれない気がする」

「危険だろ!! だから彩はかえ……」

ダメだここから一人で帰らせたら何のために俺が着いてきたのか分からない

震えている彩を一人にさせるようなそんな……そんなダサい俺にだけはなりたくない!!

「どうしたの直弥? ねえ早く帰ろ……んん」

「少し黙れ」

「んんん」

「すぐそこにきてる……今はやり過ごすぞ」

俺がそういうと彩をこくこくと首を縦に振った。

その時外からギギギギガガガガと何かが壊れたような音と喜ぶ男たちの声が聞こえた。

「しゃあ!! 壊してやったぜ!!……あんたここのやつだろどうしてこんなことになったんだよ」

「あっありがとう助かったよ。突然ここのロボットが暴走し始めて……田辺も平塚も佐藤もみんな……みんな殺されたんだ!! 事が起こってすぐに社長に言ったんだ!! なのに社長はお前たちでどうにかしろって!!……無理に決まってんだろこんな……こんな簡単に人を殺せるロボットを全て壊すなんて!!」

「安心しろ俺桝谷和孝(ますたにかずたか)に任せと…………ガハッ」

ビュシュ……ドバドバ

「ああっああぁぁぁぁ」

「ニンゲン、オレタチヲリヨウバカリシヤガッテ……ツギハ、オマエダ」

「いやだ、いやだ!!……はあ、はあ絶対に生きて帰るんだ!! 加奈、美智子待っててくれ……今から帰るから絶対帰るからお父さん帰るから!!……死ぬわけにいかないんだ!! もう少し行けば……あった!! 消化器……届け!!」

ズバン

「あああぁぁぁあ腕があぁぁ……絶対に帰るんだ帰るんだ帰るんだ帰るんだ…………」

「ドウシテオマエハイエ二、カエラレルトオモッタ?」

グチャ……バキバキ……ブチャ

「ホカノニンゲンヲサガシテスベテ……コロス!!」

ロボットはそういって後どこかへ行った。

「彩……もう大丈夫だから……着替えるのは後にしとけよ……でも本当よく叫ぶの我慢出来たな」

「……わっ分かってる……こんな歳になって漏らしちゃうなんて……それに叫ぶの我慢しないと殺されちゃうでしょ……どっどうしよう家に帰れるかな直弥?」

「家に帰れるかどうかじゃない!! 俺が絶対に帰してやる!! だから安心しろ……俺に何かあっても彩だけは逃げてくれ、分かったな」

「嫌だよ!! 直弥も一緒じゃなきゃ嫌!! 直弥のいない人生になるんだったら……私……死んだ方がマシだよ」

いつもの俺なら彩にこう言われたら飛び跳ねるほど喜ぶだろうが……だって両思いだって分かったんだから……でも今は彩を助けるのが先だ。

まずはこの工場の地図を探さないと。

どうにかして明かりをつけたいが……明かりをつければあいつらに見つかってしまう。

今は工場の僅かな光を頼りに進むしかないな

「彩俺がついてる。だから安心しろ…………こうすれば少しはマシだろ」

俺はそういって彩の手を握った。

「あっありがとう直弥……なんだかいつもと逆だね」

「まっまあな……こんな時ぐらい動けないと……」

「……私は動けない……どうしよう」

「分かったなら……こうすりゃいいだろっと」

俺は彩をおぶった。

「じゃあ動くからしっかり掴まってろよ彩」

「ごめんね、動けなくて」

「こういうときはごめんじゃなくてありがとうだろ」

「うん分かった。ありがとう」

彩はそういったあと小声で

「直弥のことやっぱり好きだな……」

こんな時に……いやこんな時だからか。

俺は彩を背負って足音を殺しながら走った。

すると彩が

「直弥止まって!! 少し前の角からあいつが来てる」

「どうして見えてないのに分かるんだ」

「音で……多分直弥の背中が安心するからいつもより音が聞こえやすいんだと思う」

「分かった彩を信じる。彩時間が出来たら親でもいいから携帯で連絡できないか?(そうすれば考えたくはないが……二人とも死んだ時探してくれる可能性が生まれる。噂にでもなれば……誰かが来るだろ。そうすればあいつらの存在を伝える事が出来る。特に矢澤さんにさえ伝われば……どうにかなるはずなんだ……どうしてあの時連絡先を聞かなかったんだ!! 今は悔いている場合じゃない)」

「わっ分かった直弥」

それから俺と彩はあいつに見つからぬように隠れた。

「「はあ、はあ……」」

ガラガラガラ

「コノアタリカラナニカ、オトガ……コノニンゲンヲ、ゲシュルドルフサマニケンジョウセネバ」

あいつはそういい俺たちの横を通り過ぎた。

……なんで見つけないんだ? すぐ横を通ったのに普通見つけられるだろ!!

「ねえ直弥ゲシュルドルフ様って!!」

「……何か知ってるのか彩?」

「そのゲシュルドルフってここ工場で初めて作られた駄菓子製造専用AI搭載ロボットの名前なの!! 世界初の開発だったから世界中から取材のために記者が来てたの!!」

「そうなのか……彩は物知りだな」

「物知りって……なんで直弥は知らないの?」

「いやぁ、テレビとかあんまり見ないから」

「テレビ見なくてもネットがあるでしょ……というより直弥受験の面接の時に最近のニュースとか聞かれたでしょその時どうしたの?」

「俺が知ってるニュースを話したぞ」

「……はあ、直弥が知ってるニュースって一体何年前のニュースよ。それでよく合格出来たよね」

「ああ、それは筆記で満点だったから……」

「多分それだけじゃ無理だと思うけど……まあいいわ。今はとにかくここから出よう。それじゃあ今から連絡するから……LINEでいい?」

「ああ、光は一番暗くしてからにしろよ」

「言われなくても分かってるって直弥……あれ?」

「どうした彩」

「ここネットが繋がらない!」

「はあ!? なんでだよ」

「私に聞かれても分からないわよ!!」

やばいネットが繋がらないこともだが……俺と彩の声が響いたことであいつらにバレた!!

「全力で走るからさっきより強く掴まってろ!!」

「どうしたの!?」

「見つかった!!」

「どうするのよ!! 地図さえ見つかってないのに!!」

「目が慣れてきたからなんとか……勘でどうにかする!!」

「なんでこんな状況で勘なのよ!!」

「仕方ないだろ!! 彩は俺の背中の上で道を探してくれ、二人の方が見つけやすいだろ!!」

「分かった!!」

そして俺は右の道を曲がり、まっすぐ進んだ時彩が

「この道を左に曲がって!! その先から救急車のサイレンの音が聞こえる!!」

「そうか救急車のサイレンの音ってことは外に出られるってことだもんな!! ナイスだ彩!!」

「どういたしまして!!」

そして左に曲がり出口が見えたので走り続けていたら

一体が俺の目の前に来たので……股の間を潜り抜けなんとか外に出られた。

外に出られた後も俺は彩を背負って走り続けた。

どれだけ走ったのか分からないが俺たちは街に着いた。

「はあ、はあ彩……後ろ……どうだあいつらいるか?」

「ううん、いない!!」

「そうか……よかったぁ」

「本当直弥今日はありがとう……それで私があの工場に行こうなんて言わなかったらこんなことにはならなかったのに、ごめん」

「いいって……行ったからあいつらの存在を見つけられた。あとはあいつらの存在を矢澤さんに伝えて滅ぼす方法を探してもらえば……」

「ねえ直弥その……矢澤さんって誰?」

そうか俺危険だと思って彩に話てなかったな。

「矢澤さんはこの日本だけじゃなく世界中を裏から牛耳ってるヤクザの組長だよ。一応俺はその組で親子の杯を交わしたんだ……全ては彩を守れるために。俺は彩に生きてもらうためにならなんでも出来る。例え人道的でなくとも……」

「……直弥そこまでしてもらって嬉しいけど……大丈夫なの?」

「大丈夫ってなにが?」

「その……直弥は私が生きてもらうためならなんでも出来るって言ってたけど……私は直弥がいないと生きていけないの!! だから直弥が怪我とかしないかどうか心配なの!! でも身体の怪我だけじゃなく心の怪我もしてほしくない!!」

「……なら今から矢澤さんのところに二人で挨拶しに行くか?」

「……挨拶ってなんの?」

「……そりゃあ結婚のだよ」

「……けけけけ結婚!? まっまあいいけど、でも私たちにはまだ早いというか……そのうちは子供だって……キャァァ…………絶対挨拶行くから!!」

「でもまずは矢澤さんのところに行く前にに彩の両親のところに行かないとな」

「……うん!!」

それから俺と彩は挨拶を済ませた。

なぜかネットではあの工場に行けば結ばれるみたいな噂が流れた。

その噂を試すために何人もあの工場に行ったらしいが全員帰ってこなかったことから、駄菓子工場の会社の社長はなにも話さずに辞任した。

あの工場は封鎖されそうになったが封鎖する前に……あいつらが工場から出て、この世界に来た。

そこからはAIと人間との全面戦争が始まってしまった。

俺と彩は一男二女をもうけた。

そして六十八年後

俺たち子供たちに看取られながら死んだ。

俺は死ぬ直前にあることに気づいた。

それは長男の亮弥代(りょうや)が……人間ではなくあいつらになっていたことに。

とうとう人間をAIロボットに変えて味方にし始めたのか……せめて……彩花(あやか)と奈緒美(なおみ)だけでも……助けてな……いと。

俺はそう考えながら死んだ。


おしまい

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