弾けるような恋

九戸政景

弾けるような恋

「何を書くかな」



 夏休み前日、僕は部室で机に向かっていた。しかし、原稿用紙のマス目は白かった。



「やっぱり夏らしい話かな……」

「それなら海の話じゃない?」

「……井田さん。なんでここにいるの?」



 いつの間にか隣にいたクラスメートの井田美夜みやさんを見ると、額に何かが触れた。



「冷たっ!?」



 それは有名メーカーのサイダーの缶だった。



「これ、どうしたの?」

夏来なつきせんせーへのお裾分け。文芸部の部誌、楽しみにしてるねー」



 スタイルの良さを活かしながら歩き、長い茶髪をなびかせて井田さんは教室を出ていく。



「……これかな」



 その後、僕は一つの作品を書いて、それを部誌に載せた。サイダー片手に現れて主人公の心を奪い、その後も色々引っ掻き回していく太陽のような笑顔のヒロインとの恋物語を。

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弾けるような恋 九戸政景 @2012712

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