衝撃の冒頭は単なる伏線に過ぎなかった……

第33話までのレビューとなります。

現代で目も当てられない凄絶で陰惨ないじめに、毎日耐え凌ぐ主人公の雨川思恩(あめかわしおん)。
実の弟、奏時(かなと)を失った本当の理由を知ってから沸き起こる憎悪に胸が締め付けられるような共感を覚えます。
思いを同じくした仲間といじめグループへの復讐を果たすべくナイフを手に。
相手の背中にナイフを振り下ろすサスペンスシーンや窓から飛び降りて至らしめる狂気に息を呑みます。
しかし、この復讐劇、さも当然に自然な感情任せの成り行きかと思いきや、どうやらそうではないのです。

物語の真の黒幕は誰か?
これは、神陸(しんりく)という異世界を巻き込んだ仕組まれた罠なのか?

主体的に描かれやすい異世界転生を見事な客観性で描くSFサイドが第三者目線で魅せてくれます。

前世の未練が異世界転移後に受け取る魔法に反映される設定が興味深く、その内容次第で途端に脅威にもなり、国家を揺るがす超SSS級の危険なものまで存在するから波乱含みで本当に面白い。

そんな物語の裏の裏を行く一筋縄では行かないストーリー仕立て。
想像の斜め上に思わず目を見張ってしまう作り込まれた展開が、あなたの心を惹きつけてやまないでしょう。

様々な思惑が交錯し、躍動する。
見事な伏線と深化の魔法が織り成す異世界転生群像劇を是非ご堪能ください。

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