Q. この作品についてどう思われますか?
A. 非常に印象的で感心させられる作品だと思います。全体的な構成や描写についても、とても素晴らしいと考えています。
Q. この作品において特筆すべき点はありますか?
A. タイトルと概要を先に確認して大まかな予想を立ててから読み始めましたが、実際に読了後の感想は期待以上だと判断しています。
その理由は、作品上で非常に高度な設計がなされていると考えているからです。
実質的に、本作が実現している構想や設定、そしてストーリー自体が非常に魅力的であるため、これらの部分だけでも高く評価できると思いますが、実際にこの作品が優れていると言える部分は別の側面にあります。
それは、本作の全体が一つの大きなパズルや設計図に例えられるという点と、全体的な雰囲気や感覚、そして没入感までもが緻密に設計されていると考えるからです。
創作において最も難しい部分の一つは、作品全体の感覚や雰囲気を設計し反映させて表現することだと個人的に考えていますが、本作はこの難題を巧みに解決すると同時に、活用・応用しているとみています。
Q. 結論を述べるとすれば、どのようにおっしゃいますか?
A. 本作は多くの人々に非常に印象的な感覚と魅力的なストーリーを届けることができる作品だと思います。
雨川思恩は、壮絶ないじめを受けていた。
そんな最中、いじめをし続ける相手から、「奏時は俺たちがいじめて自殺したんだ」と嗤いながら告げられる。
奏時は思恩の双子の弟だった。
「絶対に殺してやる」
そんな決意を秘める思恩のもとに、奏時の恋人だった神前から「復讐しよう」と提案される。
「私があいつらを殺す」
「全てが終わったら、二人で自殺しよ?」
そして神前は、いじめの傍観者上田洸汰を抱き込み、復讐を遂げる。
……しかしそれら全ては、洸汰によって仕組まれたものだった。
魔法が必ず一つ使える世界『神陸』にて、《記憶飛び》を手に入れていた洸汰は、地球でもう一度死ぬ事で再び神陸に戻ってきた。
「父様の力になりたい」
研究者の父親に盲信する洸汰は、父親の研究のため、自ら彼らをこちらの世界へ引きずりこんだのだ。
異世界転生し、魔法を使えるようになった思恩たちを、洸汰は操作していく……。
そして思恩と奏時にも、ある秘密があり……!?
一体彼らは、誰の書いたシナリオの上で踊らされているのか!?
第33話までのレビューとなります。
現代で目も当てられない凄絶で陰惨ないじめに、毎日耐え凌ぐ主人公の雨川思恩(あめかわしおん)。
実の弟、奏時(かなと)を失った本当の理由を知ってから沸き起こる憎悪に胸が締め付けられるような共感を覚えます。
思いを同じくした仲間といじめグループへの復讐を果たすべくナイフを手に。
相手の背中にナイフを振り下ろすサスペンスシーンや窓から飛び降りて至らしめる狂気に息を呑みます。
しかし、この復讐劇、さも当然に自然な感情任せの成り行きかと思いきや、どうやらそうではないのです。
物語の真の黒幕は誰か?
これは、神陸(しんりく)という異世界を巻き込んだ仕組まれた罠なのか?
主体的に描かれやすい異世界転生を見事な客観性で描くSFサイドが第三者目線で魅せてくれます。
前世の未練が異世界転移後に受け取る魔法に反映される設定が興味深く、その内容次第で途端に脅威にもなり、国家を揺るがす超SSS級の危険なものまで存在するから波乱含みで本当に面白い。
そんな物語の裏の裏を行く一筋縄では行かないストーリー仕立て。
想像の斜め上に思わず目を見張ってしまう作り込まれた展開が、あなたの心を惹きつけてやまないでしょう。
様々な思惑が交錯し、躍動する。
見事な伏線と深化の魔法が織り成す異世界転生群像劇を是非ご堪能ください。