第3話 厄介者

 姫は十三歳となり、愛らしさや可愛らしさは徐々に美しさへと変わっていった。

 美しいダイヤモンドシルバーの長い髪をなびかせながら城内を歩く姫。しかし、姫を見る王族や貴族たちの目は、彼女が厄介者であることを物語っていた。


 ゴミの処理や下水の整備、害虫の駆除など、誰もが嫌がる仕事を微々たる金額で請け負っていた街のストーンブラックたち。子どもたちも街の清掃やクズ拾いなどで必死に小銭を稼いでいた。奴隷にもなれなかった彼らにとっては生命線である。


 姫は、これらの行為を全面的に禁止とした。

 これらをすべて王家にて有償で請け負うことにしたのだ。

 ストーンブラックたちは焦り、ジュエラーたちはコストアップにはなったものの、宝石姫の石ころイジメだと笑っていた。


 しかし、街からストーンブラックの労働者の姿が消えることはなかった。

 姫は請け負ったそれらの仕事をストーンブラックたちに割り当てていったのだ。安いながらもこれまで以上の賃金を支払い、扶養家族持ちなどの条件を満たした者には、食料や衣料品と交換できるチケットも配布した。現実世界で言うところの公共事業と貧困者支援である。

 このことにより、ストーンブラックの生活改善だけでなく、元々人口の三分の一以上を占めていたストーンブラックが経済の輪の中に入ることで、王国の経済も活性化していったのだ。


 街に溢れるストーンブラックたちの笑顔。エメラルドグリーンやアンバーイエローの平民たちへの経済的恩恵も大きい。占いの予言通り、姫は新しい風を吹き込み、王国は繁栄し始めていた。

 しかし、その一方で道端の石ころが表舞台に出てきたことが面白くない王族や貴族、平民たちもいた。ヒトの価値が崩れつつあると捉え、自らの立場が崩れるのではないか、石ころに寝首をかかれるのではないか、そう考えるジュエラーたちが多かったのだ。


 その苛立ちと怒りは、姫ひとりに向けられた。


 城の中で孤立していく姫。もはや城内で姫を「宝石姫」と呼ぶ者はいない。

 それでも姫の目は王国の未来へと向いていた。心に理想の根をしっかりと張り、髪の色にとらわれず、誰もが幸せになれる国を目指して。



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