起きて見る夢は、寝て見る夢よりタチが悪いものでして

噺家やってるとねぇ、お客様から「そんな上手い話、よく思いつくねぇ」って言われるんですよ。

ですけど、噺っうのは、てめえの頭でこさえるものですから、てめえが思いつくことしか話せません。寝てる間に噺を書いてくれる誰かさんが居りゃあ別ですが、そんな知り合いはおりません。ですから「事実は小説よりも奇なり」って、噺より現実の方が奇妙だって言われちまう始末で。

そこにいくと、夢には敵いませんわ。勝手に浮かんできて、自分が思いもよらぬ方向に進みやがる。まぁ大抵は話になりませんが、時には面白い噺もあるもので。

その夢を……いや、こっから先は話しちゃいけねぇ。お品書きがございますから、そこをご覧くださいな。まぁ、そんなことをすると、どうなるって……

ちっと考えれば分かる、そりゃそうなんですよ。寝て見る夢は思いもよらぬ方向に行きますが、起きて見る夢はてめえが勝手に見てるんですから、噺のようにお定まりのところに落ち着いちまう。

しかし、てめえが考えることの行き先はてめえには分からないものでねぇ。特に人の欲ってやつは。

起きて見る夢は、寝て見る夢よりタチが悪いものでして。まぁ、悪夢ですなぁ。

え? そんな悪夢見たくない? そう言わないでさぁ。お手間もお時間も取りません。ささっとお読み願えませんか。え? 「お聞き」じゃないって? それを言うのは野暮でして。

その後に悪夢を見ても、あたしゃ買いませんけど。

その他のおすすめレビュー

村乃枯草さんの他のおすすめレビュー256