真の賢者は己の愚を知る者なり――ソクラテス

まず主人公はぶっ飛んでチートです。
しかし、チート能力を持っているからといって短絡的に国やら悪徳貴族やら魔族やらをワンパン……なんてことはしません。

物語年代時点の彼の人間性はある人物からの影響を強く受けており、そしてまた、転生直後からも優しい人物ではあったのでそこに小説を読み進めると分かる彼の行動理念が何故なのかが明らかになっていきます。

そして安易に大規模なチートを使わない理由づけや設定が秀逸で、それも相まって彼の魅力が引き立てられています。

登場人物たちもアクが強く、行動基準が良い意味でも悪い意味でも人間臭いので『なんか冒頭の数話で助けられてチョロインと化す』みたいな小説とは違う、人間、そして群像劇というものを丁寧に描こうと作者様が力を入れているのだなと私は感じました。

なので、序盤で『なんだよこいつ助けてやったのに』とか、『失礼な奴だな』って感じる部分もあるかも知れませんがそれには前述した様々な人生の背景が各人物にあります。
なので、そこで見切らずに主人公との関わりから成長していったり『だからそういう行動を取ったのか』と読み進めて行く度にのめり込める作品であると期待して新規の読者の方には腰を据えて読んで頂きたいなと思います。

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