最終話 ロメロのハガキ
郵便受けに、チラシや水道料金の封筒なんかと一緒に、知らない名前からハガキが届いていた。
またぞろ嫌がらせか何かか、と裏を見たら、そこには見知った顔と、全く知らん顔が並んで写っていた。
ロメロが似合わない白タキシードを着て、可愛らしげな女の人と一緒に写っている。
ロメロと、一緒に写る白いドレスを着た女の人はどちらも笑っていて、幸せそうだ。
「マジかよ」
結婚報告とか。律儀だな。多分、送れそうな昔の相手には、私以外にも送ってるんだろうな。
「偉いけど。偉い、けど、結婚式場で刺されたりしそう」
流石にそんなことは杞憂だろうけど、あのロメロがねえ。浮気とか、しなきゃいいけど。
「しそうだな、失礼だけど」
いっそのこと、梨恵みたいにお互い公認で複数人と関係もつ宣言でもすれば良さそう。
芸能人の不倫報道とかを聞いていても、たまにそう思う。
不倫騒動でバッシングを受けるのは、浮気はしないっていう公共的なルールに従ってる、ないしは言及しないことで暗黙に了解しているからって言うのがあって、最初から自分は恋多きホモサピエンスであることを公言すれば、呆れられこそすれ、あそこまで叩かれることはないんじゃないか、とか。
「そんなこたないか」
独り言が多くなっているのは、台所に立って料理を始めているからであった。
牛肉を醤油、味醂、酒と一緒に適当に煮込んで、椎茸なんかを添える。作り置きしてある焼き豆腐と一緒に煮込み終われば、簡単肉豆腐の完成である。
私は肉豆腐をタッパーに詰めて、バッグの中に入れた。
その後、榎本の家にはちょくちょく彼の作るスイーツをいただきに遊びに行っていて、余裕がある時なんかは、ご相伴に預かる代わりに、あらかじめ連絡をしておいて、こちらも料理を持参したりするようになっていた。
『今日はアップルパイだよ』
SNSのDMに、榎本からの連絡が届いていた。頬が緩むのが、自分でもわかった。
榎本のつくるアップルパイは、私のお気に入りだから。
バッグを肩にかけて、外に出ようとして、Uターンした。テーブルに放った、ロメロからのハガキをもう一度見る。当然のこと、そこにはロメロの新たな住所も記載されている。
なんか変な結婚祝いでも送りつけてやるか。相手の女の人と気まずくならない程度のやつ。
榎本の家までの道中、ネットでなんか良い物見繕って、贈答品として送品してやろう。
私はハガキもバッグの中に入れて、スマホを片手にネット通販サイトを開いた。
流石にセックスアイテムは勘弁しといてやる。
終。
セフレにフラれて新しいパートナーを探していたら人生の友に出会った話。 宮塚恵一 @miyaduka3rd
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