第2話 セルフプレジャー

 と言うわけで、数年来のセフレを失った私であるわけだが、ロメロの野郎がいなくなって、寝落ちした後に、起きてしたことは、セルフプレジャーアイテムの検索だった。

 私は基本的に自慰はしない派だ。家にも特に、その類のものは置いていない。言うなら。相手のいない時期に仕方なく派である。


「ふむ」


 噂には聞いていたが、この世界思っていた以上に業界が進化し過ぎていて、ネット上だと良し悪しが見た目だけだとよくわからん。

 仕方ないし、私よりは詳しかろう友達に手伝ってもらうか、と梨恵に連絡を入れる。


『……と言うわけで、今度都合いい時にでもショッピングどうよ』

『いいよー。いつ空いてるー?』

『今度の水曜日。有給』

『おけ、じゃあその日で』


 そんな感じで、朝コーヒーを飲みながら理恵と会う日を決めて、仕事に出る準備をした。


「好きな人ができた、ねえ」


 そりゃまあ好きな人くらい、できることもあるだろうさ。どんな歳になっても。   

 でも私はどうだろう。もうそろそろ二十代も後半に差し掛かる年齢だが、私には他人を好きになるというビジョンがうまく頭の中に湧いてこない。


「ロメロも私と同じタイプだと思ってたけどなあ」


 家から出て、最寄りのバス停まで歩く途中で思わず独りごつ私。


 生まれてこの方、他人を好きになると言う気持ちがわからない。

 性欲はある。寧ろ相手がいない時期は最悪、むしゃくしゃして仕事に支障が出そうになって困るくらいだ。しかし、それを恋と呼んでいいものなのか。私はそこには違和感を覚える。


 別にセックスの相手が誰かと付き合っていようが気にならない。たまに一緒に麻雀打つ友人が既婚者だろうが、どんな性癖を持っていようが、気にならないのと一緒だ。いや、あまりに度が過ぎた人格破綻者だったり、ニッチな性癖だったらヒくかもしれんけど。

 セフレはあくまでセフレであって、それ以外のことを気にしないし、気にしたくない。


 けれど、世の中そう上手くはない。私の経験上、男というのは一度寝るとアホのように相手を束縛したがる。

 だから、その加減が低く、かつ体の相性が合う相手を探すわけだが、これがなかなかに苦労する。


 そんな中でも、ロメロはかなりの優良物件だったわけだ。

 ロメロ自身、他人を好きになる感覚がわからないと言い、特定の相手に執着をしない。それでいて、体の相性も良いし、普段から複数人を相手にしている甲斐性なのかセックスの腕もある。


 正確に数えていないけれど、確か、五年前くらいに会って、四年くらい関係を続けていた筈だ。 

 人を好きになれる人は楽しそうだなあ、と思う。ただ、それでコンプレックスを抱くこともない。


 ──いや。高校生の時に一度だけ、彼氏がいたことがあったっけ。

 今はもう私には無理だと悟っているわけだが、あの頃はまだ自分も人を好きになれるかもしれない、と期待を持ち、私に告白してくれた男子と付き合ったのだ。


 結局、全然好きというのがわからなくて、熱量についていけない、と私の方からフッてしまったけど。


「あいつ今どうしてんのかな」

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