第6話 復活した元カレとの交流
あいつとのやり取りはその後もなんだかんだと続いた。
元々は気の合う友達だったんだし、この歳になってもやっぱり映画の趣味なんかが合ったのが大きい。
高校生の時は同じ演劇部で、よく一緒にカラオケに行ったりしてたっけ。
そうこうしているうちにあいつが私のことを好きになって、いつもみたいに遊びに行った時に、唐突に告白されたことを今になって思い出す。
今以上に恋を全く理解していなかった私は、こいつ相手だったらもしかして私も好きになったりするのかもしれない、なんて思って。
あいつには悪いけれど、ドギマギも特になく、冷静なまま告白にオーケーを出した。告白されたことによって意識するようになる漫画だったらよくあるようなこともなく、ただ友達の時と同じように過ごして、それでも向こうが手を繋ごうとしたりしたら応答してやって。
でも、それだけじゃあいつは満足しなかったようで。
──と、そんな過去のあるあいつと交流が復帰した。先輩の企みによる誤爆だと言うあのDMをきっかけにして。
たまに映画やドラマの感想を言い合ったりなんかして、普通に仲のいいネット上の知り合いみたいな形で連絡するようになった。
私には恋愛感情とかはないから特に気持ちの変化とかはないわけだけど、あいつの方はどうなんだろう。元カノにこうやって連絡を入れるのは気まずくなったりしないのだろうか。
そもそも私が、セフレとの関係が終わればすぐに連絡先を抹消するようになったのも、私の方にあまり気持ちの変化がないせいで、一度手痛い失敗をしたからだ。
向こうから離れていったとしても、こちらが変わらず普通に接していたら、どこかでまた気持ちが揺れることもあるらしく、また相手をしたくなったり、気持ちが傾いたりすることがあるらしい。
昔、それで私が何の気なしに向こうの誘いに乗って行って、車に乗せられたまま、どことも知らぬアパートに連れられて軽い軟禁状態にされたことがあって、流石にこれはヤベェなと思ったのだ。因みにその時は普通に警察を呼んでことなきを得た。
『今度やるあの映画観る?』
『観る。公開日に観に行くつもり』
『私も』
『一緒に観に行く?』
あいつからのその言葉には、私でも少し手が止まった。
『なあ、今ぶっちゃけまだ好きだったりする?』
だから自己防衛のつもりもあって少し気になり、そんなことを聞いた。
『どうかな。もう何年も経つし。お互い色々変わってるだろうし』
テキストだけでも歯切れの悪さが伝わってくる物言いだ。
『最後にカノジョいたのいつなの?』
またも悪いくせで、適当に聞いたその答えに返事が帰ってきたのは、その半日後だった。
『カノジョは作ってないんだ。アキちゃんと別れてから』
「マジかよ」
あいつのその返事を見て、私は思わず口にしてつぶやいた。
もしかして、私なんかと付き合ったせいで女性に対してトラウマ植え付けちったりしたかな。だとしたら、悪いことをしたし、謝らりたくなるが。
『私、観に行ってもいいよ』
二人とも変わってしまってるだろうと言うあいつの言い分は確かなのだろうけど、だからと言って、今まで私の関係の持ってきた男どもに比べれば余程無害だろうし、あいつが望むなら、カノジョにはならないよというのは当然としても、一度くらい望みを聞いてもいい。
恋愛関係を迫ってくるようならもうやり取りをすることもないだろうけど。
それはそれでなんか寂しいな、なんて思う自分に少し驚いた。
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