作者様は感覚マジシャンとも言える五感刺激の達人でしょうか。雨をテーマにした小説でありふれた触覚や視覚、聴覚だけでなく、嗅覚、味覚に至るまで……五感をフルに刺激するような描写、表現方法も去ることながら、圧倒的な洗練性に打ち拉がれるような衝撃を受けます。
晴れとの対比が雨の情緒を浮き立たせ、また陶然として歩きながら降り頻る中を浴して全身で雨を感じ取るシーンは、まるですべてを雨に捧げんばかりの精神世界として印象的でした。
またタイトルにあるアマサギという鳥名が、雨との親和性を高めるだけでなく、その鮮やかな橙として燃えるような色彩が、また雨の中でも異彩を放つーーその炎と雨との相克が網膜に美しく映えるようです。
そして極めつけは名もなき主人公。人称不明。前作の二人称を超える勢いの作風に、この物語のーー否、作者様の秘めたる可能性を、感じずにはいられない。
非の打ちどころがない作品、という言葉をカクヨムのレビューで使うのは二度目(記憶している限りでは)なのですが、いずれも佐藤さんの作品に対して使っています。
軽々しく使う言葉ではないと思うのですが、「非」と思われるところが本当に一つもありませんでした。
もちろんこれは読者の嗜好や感受性に依る部分もあると思うですが、一般的に見ても小説としての完成度は非常に高く、カクヨム内でも頭抜けていると思います。
テーマである「雨」を情景として描くだけに留まらず、異なる感受性を伝い描いているところがとても好きです。
良い点、好きな点を挙げていったらきりがないのでこれ以上は割愛しますが、この作品と出会えた人は、読むのが少し難しいと感じる部分もあるかもしれませんが、一つ一つの言葉を読み、この小説を深く味わって欲しいなぁと思いました。
このお話は、正直自分にはとてもつらかったです(;_;)(;_;)(;_;)
こうあってほしいという願いの逆っかわに全力疾走されたお話で、読み手としては最後突き放された感があります。
自分が描いた光景は、どこにでもある地方都市。
田んぼがあって、少し古い家に住んでいて、ちょっと歩いたところに林がある。
めっちゃノスタルジック。
だけど、主人公はどこか追い詰められている。
同居人とはあまりうまくいっていない。
そして、雨がずっと降っている。
「私」も「わたし」も「僕」もない、一人称のまったくない主人公は余白だらけで、読者として想像力をフルに発揮して挑みました。
「あなた」という言い方をしますが、「あなた」が何を抱えているのかは分からない。
だけど、もしこの先「あなた」がまた小さな命に出会うことがあるのならばその時はどうか……、と願ってしまいました。
読んだのは午前中でした。
夜にお酒飲みながら読んでたら、色んな意味で泣いちゃうよ~~~~(T_T)(T_T)(T_T)(T_T)
「あなた」よ!
アマサギのひなよ!
どうかどうか救われてくれ~~~~~!!