雨よ、アマサギよ。

 少しだけ窮屈な女物のサンダルをつっかけて外に出る主人公。板張りの廊下などの描写も、主人公が「在る」ことを示してくれております。

 庇護下にあるべき年齢なのか、または、狭い空間から出ることがかなわないのか。
 保護者とは言いがたい存在は動物のなまぐさいにおいで示され、雨と、アマサギは生き生きと描かれます。
 生きる意味と、出会いと。
 雨とそれから題名でもあります鳥『アマサギ』は主人公の近くに。常にではないものの、夢のような雨の中。アマサギと共にその中にいられるのであれば、主人公はある意味幸せだったのでしょう。
 ですが、幸せとは言いがたい結末が待っております。読者にも、ある意味では予想ができることかも知れません。
 ただし、それは救いがたいというものではないのです。
 そんな本作の結末をどう感じ、想像するのか。
 
 決別なのか、成長なのか。
 雨と、アマサギだけが知っている。 
 それもまた、ある意味心地よい。

 万人が主人公に共感できるかと言えば、そうではない作品ではございます。

 然しながら、雨とアマサギとを通して何かを得た主人公の姿と、常に存在を示していながらも、くどくない、『雨』。
 それは、お読みくださいましたあなたのところにも、何かを降らせるのではないでしょうか。

 新しく読まれます方には、新鮮な驚きを。再読の皆様には、感嘆を。
 このレビューがその一助になりましたら、幸甚に存じます。

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