雨よ、アマサギよ。
- ★★★ Excellent!!!
少しだけ窮屈な女物のサンダルをつっかけて外に出る主人公。板張りの廊下などの描写も、主人公が「在る」ことを示してくれております。
庇護下にあるべき年齢なのか、または、狭い空間から出ることがかなわないのか。
保護者とは言いがたい存在は動物のなまぐさいにおいで示され、雨と、アマサギは生き生きと描かれます。
生きる意味と、出会いと。
雨とそれから題名でもあります鳥『アマサギ』は主人公の近くに。常にではないものの、夢のような雨の中。アマサギと共にその中にいられるのであれば、主人公はある意味幸せだったのでしょう。
ですが、幸せとは言いがたい結末が待っております。読者にも、ある意味では予想ができることかも知れません。
ただし、それは救いがたいというものではないのです。
そんな本作の結末をどう感じ、想像するのか。
決別なのか、成長なのか。
雨と、アマサギだけが知っている。
それもまた、ある意味心地よい。
万人が主人公に共感できるかと言えば、そうではない作品ではございます。
然しながら、雨とアマサギとを通して何かを得た主人公の姿と、常に存在を示していながらも、くどくない、『雨』。
それは、お読みくださいましたあなたのところにも、何かを降らせるのではないでしょうか。
新しく読まれます方には、新鮮な驚きを。再読の皆様には、感嘆を。
このレビューがその一助になりましたら、幸甚に存じます。