ー 70話

???「う~ん.......。」

???「アァァ"、ほんまに!(大声)」

司書「図書館ではお静かに!」

???「す、すみません......。(小声)」

???「はぁ.......。(溜め息)」


この広い図書館の中にある沢山の鉱石に関する本を、ほとんどを読みつくしたはずなのに.......それなのにも関わらず、一向にアダマスと言う物について知る事が出来ずにいた俺は、イライラが限界突破をし、思わず図書館内で大声で叫んでしまう。

鉱石に関する本以外にも、鉱石と言う物が出てくる本であれば、絵本や伝記、小説等ありとあらゆる本も片っ端から読んでいった.......。

それなのに.....アダマスについて書かれていないどころか、アダマスの実態や掘れる場所、どういった鉱物なのかすら知る事が出来なかった。


俺がこんなにも、今すぐに鎚を手に持ち、鍛冶をしたい欲求を必死に抑えて調べているのに.......。


今までこのゲームでこんなに長い間、鍛冶に触れずに別の事をしたのは、このゲームを始めたばかりで右も左も分からなかった時以来だろう.......。


???「......辞めや、辞め。」

???「こんクソ依頼なんかほっぽりだして........。」


手に持った壊れた時計を見つめながら、溜め息を付いて本を開ける。

もう一週間以上こんな事をし続けている。

世間では、AIだかNPCだかの人権だのこうするべきだなどと言ってはいるが、そんな事今の俺にとっちゃぁ知ったこっちゃない。

どうしてこんなにも必死になってこの依頼を頑張っているのかって?

そりゃぁ勿論、鍛冶のレベルが上がるっていう話が魅力的なのはあるが、決してそれだけが理由じゃない。


やっぱり俺にも鍛冶に対するプライドがあるからだろう。


一度引き受けた依頼に対して、やっぱり出来ないなんて事があっちゃぁ職人のプライドに傷が付くってもんだ。

もちろん時計の修理なんてもんは、専門外ではあるのだが......一応これは、時計の形をした武器のようだし武器とあっちゃぁ俺の専門分野だ.......。

納得してねぇ部分も多くあるが、どうせ辞めるつもりでいたゲームの最後の依頼になるかもしれない物なのだし、それが失敗とあっちゃぁ寝覚めも悪いからな.......。


???「取り敢えず、気晴らしに外の空気でも吸いに行くか.......。」


相変わらずウルカーヌスの外の空気は、鉄と汗の入り混じった匂いが充満している。

こんなに必死に本を読んで探しても、何の成果も得られなかった事からして、もしかしたら本には書かれていない物なのかもしれない......もしくは、別名でアダマスという鉱石なのかも.....。

こうなったら本じゃなくて自分で鉱山に行って鉱石を掘って来るしか方法が思いつかない。

一応、ここにあるのは確かなようだし、掘っていれば何時かは手に入るだろう。

それに......もう我慢の限界だ......。


???「ずっと本の虫になってたんじゃぁ、何も面白くないし腕もなまっちまう.......。」

???「確か.....鉱山のダンジョンは、こっちだったよな.......。」


インベントリーから昔愛用していたツルハシを久しぶりに取り出して、鉱山へと向かう。


NPC「よぉ嬢ちゃん、ここへは何の用だ?」


鉱山の入り口で、受付を行っているNPCの土人が俺に向かって話しかけてくる。


???「鉱山でちょいとお目当ての鉱石でも掘ってこようと思ってね。」

NPC「ほぉ、嬢ちゃんはもしかして鍛冶師かい?」


目を細めながら身体をじろじろと見つめて満面の笑顔で聞いてきたNPCに、


???「そ、そうだが.....なんだよ。」

(前みたいに、女が鍛冶とかやってんのかってバカにすんのか?)

NPC「いやぁ、なかなか腕が立つ鍛冶師に見えてね。」

???「んだよ.....そんな事見ただけで分かんのか?」

NPC「ガッハッハ、そりゃぁ俺も職人だからな。」

NPC「多少は職人の力量くらい分かるもんさ。」


そう言って笑い飛ばして笑顔を向けてくる。


???「.....お前は俺を馬鹿にしねぇのかよ?(小声)」


前にここで鉱石を掘りに来た時には、このNPCではない別のNPCなのだけれど、ここの受付のNPCに、

「女なんだから鍛冶なんてやってねぇで家で家事でもしてろよ。」

と笑い飛ばされたものだから、今回も前回のようにまた何か変な事を言われるものだと思って、嫌な気分になっていたが、想定外の反応に驚いた。


NPC「ア"?んな事して何になんだよ?」

NPC「美味い酒でも飲めんのか?」

NPC「鍛冶の腕でも上がんのか?」

NPC「相手を馬鹿にしたって何の意味もありゃしねぇ。」

NPC「それにな、俺とお前は同じ職人なんだから、そんな同じ職人仲間を馬鹿にしたりなんざしねぇさ。」


そう言って笑い飛ばしてから、手続きの書類を渡してくる。


NPC「おら、入場料の1万Shell受け取ったからもう入っていいぞ。」


ここのダンジョンは、この都市のNPCによって管理されており、他の放置されているダンジョンと違い、特殊なダンジョンであるためこのように入場料を払う必要がある。鉱山1回の入場に付き1万Shellというのは、決して安くない値段なのだが、その分鉱石も沢山採掘しやすく他のダンジョンに比べれば都市に管理されているからか、圧倒的に安全なのだ.......。

もちろん、ダンジョンであるためモンスターやトラップがあり、油断すれば死ぬ可能性もあるし、ダンジョンの奥へ進めば進むほど開拓されていない場所が増えてくるため、より危険な場所になってくるのだが、その分レアな鉱石などが多く手に入れることが出来る。

それから、ダンジョンから出た後も掘った鉱石の中から20%ほどを都市に納めないといけないというデメリットがあるのだが、それでもここ以外に鉱石を安全に掘れる場所はないため、鍛冶をやってる人は大抵ここで必要な素材を掘って行く。

もちろんその分、武器や防具の値段が高くなってしまうわけだが......それはまぁ仕方のない話だ。

もちろん、戦闘職のプレイヤーに素材を集めて来てくれという依頼を出す事も出来るし、その方が楽で安く済むのではあるのだが、戦闘職のプレイヤーは素材の良し悪しなんて分からないし、品質と言っても生産職のような鑑定や目利きの技能が無ければ品質を見分けられないのだ。

ちなみに、戦闘職の人間が生産職のような鑑定や目利きの技能を覚えないのは、決して覚えられないからというわけではない。その技能を手に入れるためには、相当な練習と時間が必要だからなのだ。

それに、戦闘職には戦闘職専用の鑑定や目利き、看破のような技能があるため、基本的に生産職と戦闘職とでは、"見ている所"が全く違うため、戦闘職が生産職の技能を覚えないのは自然な事なのだろう。

となってくると、戦闘職を雇って護衛してもらいながら、その間に生産職が素材の収集を行うような事をすれば少し高くはなるかもしれないが比較的に安く済むのでは?と考える人も多いだろう。

だが、それだといろいろと問題が出てきたため、それを行う事はあまりしなくなってしまったのだ。

その問題と言うのが、生産職は素材収集を行う際に多くの時間を使いながら、素材の品質を見分けて収集を行うため、戦闘職の人たちの不満が大きくなり訴えてきたのだ。さらに、他にも素材の分配で大きな問題が起きた。

倒したモンスターも、生産職にとっては貴重な素材であるため、依頼をしたのだからそれを譲ってほしいという意見と、戦闘職はその素材を高値で他に売りたいという意見の間で争いが起きたのだ。もちろん、これは些細な言い争いにしかすぎなかったのだが......。

他にも、素材収集を終えて武器を制作し、武器の費用を払ってもらう際にも問題が起きたのだ。

素材収集を手伝ったのだからもう少し安い費用で買わせてくれという戦闘職側の訴えがあったのだ......。

確かに、戦闘職の方々のおかげで簡単に素材を収集する事が出来たのは事実だが、武器を作る過程では、生産職側に多大な時間と精神力が必要とされるため、武器を1つ制作するだけでも、生産職側からしたら大変な事なのだ。それに、素材収集の際に、品質を見分けたり、良い素材を集めるために頑張ったのは、生産職側であるためこれ以上安くするのは難しいと言う意見と戦闘職側で大きな言い争いが起きたのだ。

こういう事があり、頼むくらいなら自分で採りに行ったほうが余計な問題も起こらないし、最終的には安く仕入れて高く売る事が出来るため、滅多な事が無い限り戦闘職に護衛依頼をしたり、素材の収集を頼んだりしないのだ。

もちろん組織で活動しているいわゆるギルドや組合のような存在に所属しているところは、素材を溜めている倉庫や、役割分担を行っているため、そのような問題などはあまり起きないのだが......。

個人でやっている人達はこういう事が過去に起きたため、戦闘職の人には頼らずに自分の力で素材を収集し、制作して販売する人がほとんどなのだ。


まぁ.....そんなこんなで、ここウルカーヌスの鉱山型ダンジョンでは、他と比べて安全であり、戦闘に向いていない生産職、それこそ土人という種族にとってはとても貴重な資源集めの場所となっており、高い利用料を払ってでもダンジョンに入場して素材を集めるのだ。

それに、都市にあるため死んだとしてもスポーン位置が近いため直ぐにまたダンジョンに行くことも出来るため、人気のスポットとなっている。

ただ.......戦闘職にとっては、このウルカーヌスの鉱山型ダンジョンは、モンスターも少なく鉱石集めなんかするよりも、他の場所で狩りをして素材を手に入れたほうが楽だし、わざわざ利用料を払ってまで行く意味も無いため、不人気の場所となっている。

ちなみに、昔ここのダンジョンで戦闘職が鉱石を大量に集めて、それを生産職に高値で売りつけようとする商売を行ったのだが、生産職の人達は自分で集めたほうが早いし、品質も良いという事で一瞬にしてその商売も頓挫して消え失せたのだった。


???「っさ......出来るだけ奥の方まで行ってみますか......。」


まだ誰も見たことも聞いた事も無い鉱石なのだから、きっとここのダンジョンの奥深くまで潜る必要があるのだと信じて俺は、奥深くまで探索に向かうのだった.......。


PlayerName:不明

種族:土人

職業:鍛冶師

Level:不明

Skill:不明

称号:不明


[Name:鋼炎鉄こうえんてつのツルハシ]

耐久性:32049/52000

器用さ:+32

鋭さ:+9

破壊力:+23

オプション

採掘強化さいくつきょうか(石がよく砕ける)

岩砕破壊がんさいはかい(硬い岩を砕きやすくなる)


<ネタバレにならない程度でサクッと解説コーナー!!!>

「どうも書架に飾るを書いている白ウサギです。」

「どうやら、図書館にはアダマスという鉱物についての情報は何も得られなかったようですね......。」

「一体どんな見た目の鉱物なのでしょうか?」

「アダマス.....見つかるといいですね。」

「それから、都市の中にダンジョンがあるだなんて.....モンスターが出てきたりは、しないのでしょうか?」

「それとも、しっかり管理が行き届いているから大丈夫という事なのでしょうか?」

「いろいろ知らない事がまだまだ多くあるようです。」

「以上で本日のサクッと解説を終了します。」

「いろんな質問やコメントをお待ちしております。」

「いつでも、どんなのでも歓迎です!」

(ただ、ネタバレを含む解説は出来ませんので悪しからず。(小声))

「さようなら~。」

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書架に飾る 白ウサギ @SnowRose0

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