アクアマリンのような悲しみとその先に輝く希望

サンテグジュペリの「星の王子さま」に「おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない)」という言葉があります。(正確には「星の王子さま」の序文ですが)。
親しかった女の子。共にいるだけで世界がきらきらするような人。
そんな人が存在すること。
そして――そんな人を失ってしまうこと。
その悲しみがこの物語には書かれています。
それも、どこか透き通った光を帯びた悲しみとして。
個人的にそれは、宝石のアクアマリンを連想させました。
恐らくその失ってしまう悲しみは、主人公の雨斗が子どもであり、命を失った志が子どもであるからこそ、不思議と澄んでいるのではないでしょうか。
大人が気づかないし気づけない、忘れてしまったか納得してしまった、心からの悲しみです。
その静かな喪失感が文章の端々から感じられます。
そして、最後の雲間から光が差し込むような「彼女」の存在と一声。
悲しみの癒える時が来たことを連想させる希望がそこにあります。
一粒の宝石のような物語です。

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