人がどのように調子に乗っていくのか――その正確なシミュレーション

チート。異能。最強。
恐らく誰もが「自分だけ」そんな能力を得られたらどんなに幸せになれるだろう、と思うのではないでしょうか。
まあ……そう書いている自分だってどんなに楽だろう、とは思います。

それはともかく。
そんな能力を持った主人公の物語に読者が期待すること。
それはたぶん二つでしょう。
一つは爽快さ。
与えられた力で不条理を叩き壊したときのスカッと感じられる気持ち。
そしてもう一つ。

もしかするとそれは――堕落かもしれません。
読者である自分には手に入らない力を手にしていい気分になり、自分が特別になったと勘違いしているような主人公が……
どのようにして報いを受けるのか。
そんな期待もまた、確かに存在するのでしょう。

この短編には、一人の超能力者がどうなっていくのかが書かれています。
他人とは違うと息巻く彼がどうなったのか。
どうぞ、最後までお読みください。
金や力を得た人間が、承認欲求に振り回されていくさまがとてもリアルに描かれています。