剣は鋭く 意志は固く しかし心は鮮やかに咲く花のように

堅苦しくなく読める歴史小説としても、優しい恋愛小説としてもおすすめです。
そして思いのほかがっちりと歴史の重要な場面が出てくる小説でもあります。
あの新選組も登場しますし。やっぱり一番隊隊長との手合わせは燃えますよね。
主人公も序盤の自由でありながらどこか空虚な雰囲気は次第になくなり、一人の血の通った人間として成長していきます。
剣劇の描写もしっかりと描かれています。並みの剣客よりも修羅場はくぐっているのではないでしょうか。
彼女にしかないいわば「秘剣」もありますし。
一人の剣客とともに、この時代の雰囲気を味わいたい方にお勧めです。
もちろん、主人公の恋路を読んでワクワクしたい方にも。

明治。剣客が最後に命をかけて輝いた時代。
その激動をたった一人で何にもとらわれずに進んでいくのが主人公の女性剣士、律。
腰の愛刀だけを頼りに自由気ままな一人旅でしたが、それも終わりを告げることに。
守りたいもの。大事な人。心を許せる友。
だんだんとそういったものが増えていく彼女の日々。
それはもしかしたら、律という女性が手からこぼれ落ちていったものを取り戻していく日々なのかもしれません。
これは、時代の流れにいやおうなく巻き込まれていく一人の流浪の剣客が、人並みの幸せを手にするまでの物語です。

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