5000字でさらりと読める剣豪小説

伊藤一刀斎。
生没年不詳の戦国時代から江戸初期にかけての剣客。
本人は自称してはいないが剣術の一派「一刀流」の開祖。

難しい話はこの辺りで。
剣豪小説や時代小説というと、どうしても難しくて読むのが面倒、と思う方も多いでしょう。
しかしこの小説は約5000字。しかも主人公である伊藤一刀斎の一人称で進みます。
まず何よりも読みやすい。

続いてこの伊藤一刀斎という剣豪の人柄。
一言で言うなら「魔物」。
人を斬ることを楽しむその本性は恐ろしいですが、しかしこの異常性こそが彼を剣豪にしたのでしょう。
悟った老人の説教ではなく、おぞましささえ感じるのは一人称の語りだからかもしれません。

そして何よりも宮本武蔵という、日本で一番有名な剣豪との立ち合い。
この立ち合いのオチは「は?」と思う人もいるかもしれません。
しかし個人的にはまさに宮本武蔵らしい、と痛快でした。
立ち合いを終えてじっくりと考える伊藤一刀斎の姿は、やはり剣豪と思えるものです。

そんな一人の老いた剣客の短編。
たまにはファンタジーではなく歴史小説もいかがでしょうか?

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