whole lotta love胸いっぱいの愛を

きゃんでぃろっく

現実はとてもまばゆい光を放ち、俺達を見つけるんだ。 どんな小さな罪もかくせないように。

第6話覚醒

現実は……とてもまばゆい光を放ち、俺達を見つけるんだ。

どんな小さな罪もかくせないように。



 それが初めての体験だった。

彼女は一度も動揺することなく、全ての行為をこなした、と思う……たぶん。ほとんどなにも覚えてはいない、あっという間だったから。目を開けておくのもツライ快感を堪えていただけだ。どうやって彼女にイかされたのかさえわからない。ただ、彼女の、少し大げさな声だけがひどく印象的だった。

俺はシャワーを浴びたかった、快感にくだびれたカラダを起こしたくて。そう、冷静に考えなきゃいけないことがあったから、帰らなきゃ、ひとりにならなきゃ、

『イマスグニ』

って。

彼女が俺に背を向けてかばんを探している、きっとタバコだ。

「イイ?」

と訊いておいて、もう見つけたタバコに火をつける彼女。俺はとにかく居心地が悪くて、何度もシャワーを勧められたが、彼女へ謝ると逃げるように部屋をでてしまった。

 帰ってから熱いシャワーの後、自室のベッドへ倒れこんだ俺は、急いで駆け巡る記憶を辿った。

俺のカラダはまだ熱をもっている、でも俺には行為そのものより別の興奮の方が気になっていた。

俺は本当におかしい、間違いない、そうはっきりと自覚できてしまった、同時に不安になる、俺はナニを感じたのか、ナニに感じたのかということに。


ダメだ、も、ヤ……めてくれ、よ。


認めたくはナイ欲求。

異常であるコトの証。


でも、今までに感じたことのない高揚感と満足感で体中が興奮に焦がれてしまう、彼女になんども口づけられたクチビルが腫れているのに。

甘くもなんともなかった、思わず俺はクチビルをぬぐう。


だけど、記憶に残るクチビルの感触に、彼のことを想い出している。


感じたことのない興奮。

感じちゃいけない快感。


……心臓がこぼれそうだ。


俺は、今度は自らの手で自身に触れた。

「ン、はぁ――」

過敏になっている、覚えたての興奮が早足で近づいてくる。認めたくない興奮と快感がくる、俺は緩急をつけ、速め、声を殺して瞼の裏の興奮を確かめる。


ああ、彼が見える。

彼に抱きしめられる俺が、見える。


腹のソコに熱が集まってくる。先も根元も、全てが、熱と欲望に満たされて、窮屈に肉を押し広げようとしている。開放したい『イマスグニ』。

「センパ……ィ」

思わず俺は手を離して起き上がった、駄目だ、こんな風に開放しちゃ駄目だって。

「そうだよ、ダメ……だ」

罪悪感と羞恥心、俺だけが知っている俺。


「オレって、ナンナンだ、ヨ」


今にも泣いてしまいたい俺は、俺自身より熱いままの腕を、何度も何度も摩っていた。

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