第11話追求

現実は……とてもまばゆい光を放ち、俺達を見つけるんだ。

どんな小さな罪もかくせないように。


whOlE*lOttA*lOvE

David Bowie - Starman (Top Of The Pops, 1972)

https://www.youtube.com/watch?v=oOKWF3IHu0I



 Jは、教授の腕を掴んで店から出ようとした。だけど、教授がそれを振り払った。

Jは暴れだした、Jには教授しか見えていない。

「オマエさっ、わかってるよなっ! オマエっ、ムリじゃんッ! どーせっムリだろーがっ? コイツとどうにかなるつもりなの? え? コイツ知ってんのっ?! どーなんだヨッ!! カズキ!」

Jはいろんなことを言う、また意味不明なことばかりを。

でもわかったことがある、Jが教授のことを名前で呼んだこと、それだけで2人の仲が深いとわかった。

暴れるJをアンと俺がおさえた。

教授は瞳の色を失いどこも見ていない。

それに気づいた様子のがっちゃんが慌てて、

「俺、連れてかえっカラ!」

と教授を店から連れ出した。

「っくっそ!」

Jは正気じゃなくなっている。

「J、やめて、なんかわかんないけど。も、やめて!」

俺は懇願するように言った。

俺の声に反応して、烈しく俺達の手を振り解いて、Jが近くの椅子へ腰掛けた。

『教授があんな顔をするなんて、この間も泣いていたんだ、もうイヤだよ、教授が泣くのは』

教授の様子が痛ましく感じて、胸がチクチク、ザワザワ、もうなにがなんだかわからないくらいに不安だ。

「J、もうやめろよ。終わらせろよ。」

アンが静かに言う。

Jは大袈裟なくらいに足を大きく開いて、足先でコンコンと床を打ちだした。

「ハルわりィな、俺こいつと話すし、帰ってくんないかな」

Jの脇に立ち、すぐ後ろに立つ俺の方へ、顔だけを振り向けて言ったアン。

アンにそう言われて、でも俺はもっと知りたくて、Jと教授のことを知りたくて、だから俺はすぐに返事ができずにいた。

その時、

「ゃったのか」

Jがなにか言った。

「オメーさ、アイツになにしたの?」

今度はハッキリと言った。

答えられない、聞き返せない、アンも俺のことを見た。俺が答えるのを待っている、2人が。

俺には、うっすらとわかっていた。

カラダノコトを訊いてるんだって。

だけど俺にはわからない、カラダノカンケイがなんなのか。

答えられる答えなんて持っていなかった、だから、

「わからないよ、俺はナンも知らない。知らないんだ」

そう言った。

しばらくの沈黙の中でJは足先の動き止めた。

「J、俺は教授とお前のことだって、今知った。でもはっきりわかんない、マジで」

なにをどう答えていいのか解らないくせに、俺は一生懸命に応えようとした。すると、

「へっ……へへへ」

Jは気味悪く笑う。

「オメーがそんななのにアイツ、オメーのことスキなの?」


スキ


教授が? 俺のことを?

スキってなんだよ、いや、好きだよ? 俺は教授のことが好きだ。でも、J、アン、がっちゃん、俺は皆のことも好きだよ?

「……ぅだからっ、スキってなんなんだよっ! 友達だ、俺等さ、皆友達なんだよなっ?」

俺は思っていることをそのまんま言葉に出した。

「オンメー、ンとに、ムカつく!!」

近くにあった椅子を蹴り上げ、その言葉を最後に、Jは店を出て行ってしまった。

俺は出て行ったJが座っていた椅子を、ぼんやりといつまでも見ていた。

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