第10話真実

現実は……とてもまばゆい光を放ち、俺達を見つけるんだ。

どんな小さな罪もかくせないように。



 アンが冷静にJへ向かって言った。

「お前のことを言ってんだよJ。お前と教授のことにハルを巻き込むなよ」

アンがなんのことを言っているのかさっぱりわからない。

何人かが帰ってゆく。

教授はまだ俺のことを見ている。

「J、あのさ、俺等みんなわかっててお前等二人といるんだよ。けどさ、認めてるわけじゃない、友達だからだよ。認めることはできなくても、友達だと思ってんだ」

『ど……いうこと? 巻き込む?』

「お前等も俺等のことを少しは理解しろよ。お前は変だよ、ハルの言う通りじゃん。この間から変なんだよ。」

「っざけんなっよ」

Jが力なくつぶやいた。

「J、カエロ」

教授が静かに言った。

「ごめん。オレラカエルね」

教授がJの鞄を探してJに持たせようとした。

Jはその鞄を床へ叩きつけた。

「はっきりさせよーぜ。トモタヂごっこもヤだしな」

Jは顔もあげずに言った。だけど次の瞬間俺のことを真っ直ぐに見た。

「ハル、おめーもよく聞けよっ! 俺とこいつは――」

「J! マテよっっ!」

教授が大声をあげた、こんな風に声を張ることなんてないのに。

「言うな……ゆーなよ」

Jが体ごと勢いよく振り返り、こんどは凄まじい形相で教授のことを見た。

「……って、えっ!? お前さ、教授? え? お前なの? こいつのこと、お前の方なの?! え? そうなの?」

Jは心底驚いていた。

零れ落ちそうな眼の玉、ワケのわかんない独り言を繰り返し始めた、呪いにかかった愚者のように。

「ちがっ……ちがうよ」

教授の声はあまりにも頼りなくて

「んなこと、まじ・か・よ――っっ!」

Jが喚いた後の完全な沈黙、誰も微動だにしない、まるで示し合わせて一斉に息を殺したみたいに。

俺には少しづつ見えてきた、いろんなことが繋がり始めた。

あの日、あの時、

『オレもね、女の子苦手なんだ。けど仕方ないよねこれがオレだし。スキなやついるし。ってか、いた……カナ? もう恋人とはちがうけど』

教授が俺に話したこと、教授が好きだと言った奴。


J。


……なのか?


『その人が初めてなんだ俺の初体験は』

Jが? Jが教授の!?

『でもカラダ……のことは結構ツライ。オレね怖いんだ。ずっとはムリだと思うんだよあんなこと。オレさ、オレはできるならさフツーニナリタイヨ。今からでもね、ハルみたいにキレイでいたい』

そうだ。

Jは、教授と俺になんかあるって思ってたから、あのとき教授の行き先を俺が知らなかったことに驚いたんだ。Jが俺に絡んだのも、俺が教授のことを好きなんだと思い込んでいたからだ。

……胸がジクジクする

胸が痛むんだ、Jだったことが?

教授が俺を好きかもしれないことが?

なにに痛んでいるんだ?

……チクチクするんだ、なにかが壊れはじめる、狂いはじめる気がして。


俺等の夏はこれからなのに。

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