朝顔に見守られつつ恋ちかい
朝顔に見守られつつ恋ちかい
季語は、朝顔。秋の季語です。
「早すぎたね。まだ、僕たちだけだ」
植物園の駐車場に、車を停める。
会話を始めたのは、安全を確認してから。
「開園時間まで、少し時間があるね。お話してていい?」
「もちろん」
君が話をしてくれるのも、それを聞くのも、とても楽しい。
シートベルトを外すと、彼女はスマホを出して見せてくれた。
「この間の朝顔、きれいに咲いてるよ、見て!」
この間の朝顔市で購入した、蕾の多いものを選んだ朝顔の鉢だ。
ほんとうに、きれいに咲いている。
「丁寧に育ててくれてるんだね。ありがとう」
「どういたしまして。家族もね、皆、喜んでるんだよ」
朝顔の鉢には、きれいに咲いた花と、新しい蕾がたくさん。
そして、彼女の笑顔も、ぱあっと開いていて。
「あのね」
その表情が、何だか少しだけ、落ち着かない感じで。
「はい」
僕はつい、丁寧な言い方になってしまった。
「少しだけ近くに行っても、いい?」
僕は、もう一度、はいと言いそうになってしまい、慌てて思い直す。
桜の季節から、今までも、ずっと。
僕は、彼女に、言ってもらってばかり。
「ええと、ね。僕が、でお願いします」
「……はい」
いつもいつも、君に言わせてしまって、ごめんね。
朝顔を映していたスマホは、ダッシュボードに置いてもらって。
近くに行く前に。
ちゃんと、言うよ。
あんまり、いや、きっと。かっこよくは言えないけど。
「ええと。大好きです。これからも、どうぞ、よろしく」
そして。力を入れずに、軽く。
彼女を、ぎゅっ、とする。
「嬉しい。こちらこそ、だよ」
今までで一番、近いところで。
彼女の声が、した。
※ちかい、には、近い、と、誓い、を掛けております。
初句と同じ。でも、片方の意味は違うものを掛けています。
作品内では同じかけことばを用いないようにしておりましたが、初句と最終句の流れとして、このようにさせて頂きました。
最初の花筵、ビニールシートのときにも、近かった距離。
また、さらに近い距離になりました。
これからも、の誓いを聞く写真の中の朝顔も、花が開いていて。
ゆっくりですが、確実な。
二人なりの、距離なのでございます。
※第2回短歌・俳句コンテスト応募作品としては、本句までとなります。
朝顔から始まる、二人の秋です。立秋という意味での秋なので、まだまだ熱い時期ではございますが。
二人と、そして、秋の『花』。
コンテスト終了後にこちらで継続、または、別作品を俳句『花』の続編として新しく開始をしたいと考えております。
ゆっくりな二人の日々と花とに応援を頂きましたこと、誠にありがとうございました。
二人がさらに近くなれましたのは、皆様と花たちのおかげでございます。
第2回短歌・俳句コンテスト【俳句】一句部門『花』 豆ははこ @mahako
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