あとがき

 ここまでお読みくださいましてありがとうございます。

 『未融みゆ瑠璃るり』は、最初に書いたのが2019年で、このときはコピー本で刊行して同人誌即売会で展示・販売しました。

 2020年に本式に同人誌として刊行しようとしたところ、新型コロナウイルス感染症の最初の流行に重なってしまった事情は前話「同人誌版のあとがき」に書いたとおりです。


 何をきっかけにこの物語を思いついたかというと、五年が経ったいまでは正確には思い出せません。(汗)

 我が強くて突っ走り気味の少女に振り回される普通の女の子、という関係を書きたかった、ということはあったと思います。

 でも、結果的に、未融のほうもわりと気が強くなってますね。

 瑠璃とくらべて、未融のほうは、生きかたの「積極性」が声やことばや態度に出てしまうことは少ないですが、じつはわりと我が強いのかな、と思います。


 その未融の進路に大きな影響を与える沼間ぬま先生は:

 『ファイン・ガール』

https://kakuyomu.jp/works/16816700429067286906

の登場人物の一人の後年の姿です。

 つまり、『ファイン・ガール』からそれだけの時間が経ったということですね。

 ただし、『ファイン・ガール』をお読みになっていなくても、この物語を読むうえでの差し支えはありません。


 しかし。

 土星の環が平べったい状態で存在していられる理由までは私でもなんとか理解できるのですが、フリードマン方程式となるともう私の理解できる範囲を超えています。


 フリードマン方程式が関係する議論は、宇宙の平均密度が高いと、宇宙の中の物質が引き合う重力の引力が強いので宇宙の膨張はいつか止まって収縮に転じるけど、宇宙の平均密度が低いと膨張は止まらず膨らみ続ける、というようなものです。未融が言っている「宇宙の曲率」がどんな値をとるかがそれと関係します。

 それで、「宇宙が膨張している」ということがわかってから、宇宙は、いつかは膨張が止まって収縮に転じるのか、無限の未来には膨張は止まるけれど収縮はしないのか、膨張は減速するけれどいつまで経っても止まらないのか、のうちどれか、という三者一択で議論されていました。

 ところが、観測によって宇宙の膨張が逆に加速していることが判明し、現代宇宙論はたいへんなことになっています。

 いちどは「天才アインシュタインのあやまち」とされた「宇宙項の設定」が、じつはあやまちではなく正しかったことが明らかになったりとか。

 宇宙の成分の4分の3は、物質ですらなく、「正体不明のエネルギー」(「ダークエネルギー」)だいうことになったりとか。

 「ダークエネルギー」を英語にして「ダークエナジー」というとなぜか急にすごくファンタジーっぽくてあやしい設定になるとか……いうのはあまり関係ありませんが。

 加速膨張すると、遠くの光が地球に届く前に宇宙の大きさが大きくなってしまうので、加速する前には見えていた場所から出た光が、いつまでも地球に届かなくなってしまいます。

 そのため、沼間先生が言っているとおり、

https://kakuyomu.jp/works/16818093077977716497/episodes/16818093078045114567

地球から観測できる宇宙の広さはどんどん狭くなり、いままで見えていたものが見えなくなってしまう、とされています。

 それを「友だちがカナダに行ってしまったらもう通信もできないし二度と会えない」というのと重ねてしまうところが、青春だと思います!


 また、未融と沼間先生が言っているアニメ映画は細田守監督の『時をかける少女』です。

 その場面、みんな覚えているかというと、どうなんだろうと思いますが、沼間先生は覚えていたようですね。

 いま、私が、こういう少女の物語を書いている原点の一つはまちがいなくこの作品なので、私にとっては愛着のあるアニメ映画です。


 未融と瑠璃の物語はここでいったん終わります。

 でも、関係者がまた別の物語に登場したりするかも知れませんので、そのときには、また、よろしくお願いします。


 ありがとうございました。


 清瀬 六朗

 2024年6月28日

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